第19話 強敵
機体の準備を始める。
「今回の勝負はとてもじゃないが予測ができないな。どれだけ準備していても不足ということはなさそうだ。」
「そんな弱気じゃ相手に勝てないわよ。いつも通り自信に満ちたあんたでいなさいよ。」
そんな彼女もいつもより不安そうだ。
「それにしても相手の機動にはどうしたらついていけるのか分からないな。」
「相手はほとんど本能で動いていると考えていいと思うわ。そこを利用するのよ。」
なんだかよく分からないがパイロット同士何か共通する考えがあるのだろう。
だったら自分もメカニックらしく勝負といこうじゃないか。機体の性能を限界まで高めて戦ってやる。
機体の準備を終わらせて試合会場に向かった。相手には連戦に疲弊する様子もない。軽く機体の整備だけ行って後はコクピットの管理、解析にに人員が割かれている。
おそらく彼は何度もこのシステムを起動して練習しているのだろう。それならば彼を止める必要はない。ただ彼にこんな仕組みに頼らなくても、人間の生身のできる限界を証明して見せた方が早い。
純粋に機体の性能を引き出すために発想したこのアイデアだが、あまりにも致命的な欠点を抱えていた。その欠点のため私は開発を断念したのだが。
そんな思いはよそに最後の試合が始まった。
パイロット同士何か通じ合うのがあるのかほとんど同じ動作を見せた。開始と同時に最大加速で相手との距離を詰める。あわや衝突かと思われたその瞬間同時に機体が旋回し、そのまま回転してまた向き合った。しばしの沈黙ののち激しい銃撃戦が始まった。
「何が起こっているんだ…。」
こちらのチームも向こうのチームも目の前で繰り広げられる戦闘についていけなかった。
相手の大きなシルエットが気が付いたら自分たちの華奢なシルエットにすり替わっている。さっきまで機体がいたところに弾丸が撃ち込まれ、地面に弾痕が残る。おおよそ自分が設計したものとは思えない機動だった。
しかし機体の状況を見るに戦況はあまり芳しくなかった。だんだんと限界に追い込まれている。タイヤの状況や残弾、電装類の負荷を見るにかなり追い込まれている。この状況が続いたらまた相手に負けてしまう。
こんなこと、前にもあったな。
大学時代、一機が機体を操っているときに感じた無力感を思い出す。自分にできることと言えば機体のコンディションを常に最高にするため各種パラメータに目を走らせることしかできなかった。
だが、今は違う。機体にECM機能を持たせ、相手の機体に妨害を加えながら戦いに参加できるように改造した。これは仲間たちのアイデアでこちらの貧弱な武装を補うため、ジャミングも同時に行いながら戦闘を行えるようにしたのだ。
「そろそろ解析できたころなんじゃないの!?」
「ほとんど解析できた。よく耐えてくれた!」
今までいいようにされてきたが仲間の分、お返しする時が来た。
反撃開始だ。
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