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その後、僕はレーナさんと一緒にメインストリート沿いにある洋服屋さんや小物屋さん、化粧品屋さん、アクセサリー屋さんなどをハシゴした。
ただ、実際に何かを買うということはほとんどなくて、商品を見ながら楽しく世間話をしたりお互いのことを話したりしている時間の方が主体だったと思う。だから荷物持ちとしての仕事も小さな紙袋をひとつ持つくらいだった。
そして今は喫茶店というお菓子や飲み物を中心に提供するお店に入って、僕は甘い食べ物をご馳走になっている。ガラスの容器に雲のような甘い泡や果物が盛りつけられていてすごく美味しい。これはパフェというお菓子らしい。
僕はこんなに甘いお菓子を食べたことがない。というか、食感も初めてで心地良くて夢中になって食べてしまっている。
一方、レーナさんはニコニコしながらお茶を啜って、そんな僕をじーっと見つめている。
「……あの……どうかしましたか?」
「べ~つにっ♪ ただ、そろそろ薬が効いてくる頃かなぁって」
「っ? 薬っ?」
「さっきアレスが席を外した時、そのパフェに即効性のシビレ薬を入れておいたの」
「なっ? あ……ぅ……ぁ……」
持っていたスプーンが指の間から滑り落ち、けたたましい音を立てた。言葉も出せなくなる。
目の前も霞んで、全身にマグマのような高熱が広がっていくような感覚がして力が抜けていく。
そして途切れそうになる意識の中で、最後に目に焼き付いたのは怪しく微笑むレーナさんの顔だった……。
◆
目を覚ますと、僕は牢屋の中に閉じ込められていた。
冷たい床と窓のない部屋。湿気と淀んだ空気が充満しているところを考えると、ここは地下室かもしれない。
手と足には鉄の枷が付けられ、猿ぐつわを噛まされている。体の自由は利かない。さらに服も下着も脱がされて、生まれたままの姿になっている。
そんな僕の目の前には、頬を赤らめて恍惚とした表情のレーナさんがいる。
「アレスっ、目が覚めたぁ? 私、アレスのことが気に入っちゃった。だから私だけのものにすることにしたの。安心して、食事も排泄も快楽も何もかも私が面倒見てあげる。心配しなくていいんだよぉ。ふふっ……ふふふふ……ふふふふふふふふ……」
僕は頭の中が真っ白になった。心臓は圧迫されるような感覚がして苦しい。
精神が絶望と恐怖に満ちていく中、彼女はゆらりと僕に歩み寄ってくるのだった。
BAD END 2-2
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