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 その道具屋はこぢんまりとした規模で、壁には経年の汚れが付いている古めかしい建物だった。


 ただ、出入口の上部に設置されている看板には味がある上、店頭の商品はズレがなく整然と並べられている。しかも同じ系統の商品が隣り合わせに置かれて比較しやすいようになっているし、値札も見やすい位置にある。


 さらに店の前は綺麗に掃除され、窓ガラスからちらっと見える店内もアンティークな雰囲気。あちこちから気品というか、しっかりとした老舗という感じが漂っていた。このお店ならきっと安心して売買の交渉が出来るだろう。


 だから僕は少しだけホッとしつつ店の中に入る。


「……わぁ……っ」


 思わず僕は感嘆の声を漏らした。


 天井から無数のランプが吊され、店内は柔らかで温かみのある光に包まれている。まるで小さな太陽がいくつもあって、星の世界にでも迷い込んだんじゃないかという感じ。


 そして奥には薬草やお茶のコーナーがあって、そこからいい香りが漂ってきている。


「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」


 新雪のような真っ白いあごひげを生やし、茶色の作業用エプロンを身につけた六十代くらいのお爺さんがニッコリと微笑みながら声をかけてきた。落ち着いた雰囲気と口調で物腰も穏やかだ。


「あの……道具の買い取りをお願いしたいんですけど」


「承知しました。では、こちらへどうぞ」


 僕は店の奥にある応接スペースへ案内され、そこのソファーへと腰掛けた。そして剣をお爺さんに渡すと、出されたお茶を口にする。



 ――うん、美味しい。さわやかな若草の香りが鼻を抜け、程よい温かさが喉を通り抜けていく。おそらくハーブティーの一種じゃないかな。


「お客様、こちらの剣でしたら十万ルバーで買い取らせていただきますが、いかがなさいますか?」


「十万ルバーですか。分かりました、それでお願いします。それと中古で構わないので、代わりになる剣を売っていただけませんか? 一万ルバーくらいの」


「承知しました。ご用意いたしましょう」


 こうして僕は持っていた剣を売り、中古の剣と九万ルバーを受け取った。いい取引が出来たと思う。もしかしたらこの道具屋さんは当たりだったのかもしれない。


 だって僕は剣の売値が数万ルバーくらいかなと思っていて、それよりも高い値が付いたから。しかも新たに購入した中古の剣は値段の割にしっかりしていて、手入れさえしっかりすれば充分に使える品物だ。



 ……まぁ、僕が剣を使いこなせるかどうかは別問題だけど。


 →30へ

https://kakuyomu.jp/works/16816927859115438262/episodes/16816927859116870954

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