概要
臨床心理士の長澤麻子は、
多重人格障害と思しき少年のカウンセリングを担当する。
以来、麻子に説明のつかない怪奇が襲来する。
臨床心理士として致命的なトラウマを持つ麻子と、
トラウマに立ち向かう少年の、
魂の救済を描きます。
*キャッチコピーはマーク・メドフの戯曲
『小さき神の、作りし子ら(Children of a Lesser God)』
の冒頭より引用
↓
なぜ我らここに集う
あたかも、より拙き神の作りし子らが
その御心のままに事をなすには
力及ばざりしごとく
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!トラウマに隠れる真実とは? 多くの人に読んでもらいたい物語
主人公は臨床心理士の長澤麻子。
彼女が多重人格障害と思われる青年のカウンセリングを始めることから不気味な現象が起こり始めます。一体誰が何のためにしているのか? 謎が深まります。
一見華やかな経歴を持つ美人臨床心理士の主人公ですが心のうちには様々な葛藤を秘めています。徐々に明かされていく過去、彼氏との現状、自分の未来をどう生きていけば良いのか。
登場人物たちそれぞれの境遇や気持ちが丁寧に描写されており、感情移入しながら読み進めました。
更に臨床心理士という仕事の内容やインテークの様子も丁寧に書かれているので、まるで自分も院内にいるかのような没入感があります。
トラウマといかに向き合うか。そ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!臨床心理士のお仕事&ミステリー、ホラー風味を添えて
臨床心理士の麻子が少年のカウンセリングを進めていく中で、色々なことが起き始めて……という導入の現代ドラマです。
特筆すべきは臨床心理士の仕事の様子が非常にリアルで詳細に描かれており、その点とても興味深く読ませていただきました。
ところどころ背筋が寒くなるような描写もありつつ、麻子の人間関係、実際のカウンセリングとこれらの要素が絡み合いドラマが展開し、心理に関わる仕事に対する偏見への問題意識だったりと社会派な要素もありつつ、ストーリーが進んでいきます。
トラウマを扱っていることもあり若干重苦しい雰囲気が続き、けして敵を倒してハッピーエンドという類のお話ではありませんが、自身の仕事に誇りを…続きを読む - ★★★ Excellent!!!トラウマへと目を向けようとする、人の心理の物語。
本作をサイコ・ミステリー、サイコ・サスペンスとくくってしまうと、ややおどろおどろしいような誤解を招く表現ですが、丁寧に「心理の事件」を描いていく物語です。
カウンセラーである主人公・長澤麻子も、そのクライアントの少年・羽藤柚希も、それぞれ負ったトラウマは当然ながら過去のものです。しかし二人の出会いから不可解な事件が起きはじめ、様々な人間ドラマや羽藤の語る過去の疑惑も不穏な影を濃くしていきます。
混乱した状況、次第に明かされていく登場人物の過去。全編を主人公の徹底した一人称で語られ、話の進むごとに重苦しい雰囲気をも帯びていく作品ですが、その丁寧な描写や問題に向き合おうと絶えず主人公が内省す…続きを読む