第2話 異分子
あの年齢で付き添いの大人を伴わず、一人で心療内科に来ているのなら、初診ではないはずだ。初診であれば、保護者に付き添われて来る。
また、心療内科という特殊性から本人も顔を強ばらせ、もっと所在なげにおどおどしているものなのだけれど、彼はどこか
身長は、百七十センチ前後だろうか。
どちらかというと痩せ型ではあるものの、病的なまでに痩せてはいない。
清潔にカットされた癖のない黒い髪。ほっそりした高い鼻梁に円らな双眸。
薄い唇に華奢な顎。横顔は中性的で端正だ。
ダッフルコートを脱いで丸めて抱え持ち、彼は、混み合う待合室を悠然と見渡した。
コートの下は黒のニット。そしてジーンズにスニーカー。
服装に、これといった特徴はないのだが、頭が小さく足が長い。スタイルと顔立ちだけでも、充分人目を引くだろう。
駒井クリニックの待合室のクライアントの、薬物依存症者やアルコール依存患者は落ち着きがなく、血走らせた目で周囲をぎょろりと伺い見ている。
かと思えば、鬱や強迫神経症患など、排他的な者の多くは、人目を避けたいがために、息を凝らして俯いて、ひたすら診察の順番を待っている。
定職に就くことが難しい、彼らの多くは生活にも
身形に構う精神的余裕も、経済的余裕も失くしている。
そんな中、表情も物腰も柔らかで、品のいい微笑みさえ
しかし、彼がクリニックのクライアントだという記憶はない。だとしたら、どこか別のクリニックからの転院だろうか。
麻子は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます