概要
彼女を忘れるということは 人の愛し方を忘れるということだった
海沿いの街、梶栗郷にひっそりと佇むファッションホテル『ピシナム』は、2019年2月にその歴史に終止符を打った。
ホテルマンとして働いていた青年の磯辺は、ライターの秋山千鶴から『ピシナム』の取材を持ちかけられていた。磯辺は取材を経たのちに、かつてホテルを利用していた女子高校生「R」との出来事を思い返す。
当時、ホテルを訪れる度に風貌の違う男を連れまわすRを、磯辺は次第に気に掛けるようになっていった。2人は顔を合わせることはなく、声を掛け合うこともなく、フロントと部屋を繋ぐ気送管ポストで手紙だけを送り合う。
そして磯辺は文通のなかでRの抱える秘密と孤独に気づき始める……。
ホテルマンとして働いていた青年の磯辺は、ライターの秋山千鶴から『ピシナム』の取材を持ちかけられていた。磯辺は取材を経たのちに、かつてホテルを利用していた女子高校生「R」との出来事を思い返す。
当時、ホテルを訪れる度に風貌の違う男を連れまわすRを、磯辺は次第に気に掛けるようになっていった。2人は顔を合わせることはなく、声を掛け合うこともなく、フロントと部屋を繋ぐ気送管ポストで手紙だけを送り合う。
そして磯辺は文通のなかでRの抱える秘密と孤独に気づき始める……。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!人は無力で懸命で
それぞれの人は上手くいかないことがあります。忘れがちですが必ずあります。取り返す努力も上手くいかなくて、無力さにほぞを噛みます。
人がそれを忘れる理由の一つは、他人に見せないからです。黙って胸の奥にしまいます。他人は気づきません。
もし他人の苦しむ姿を見たら。他人は無力さと同時に、応えられない自分の無力さを知ります。
でも、人は何もしていないのではありません。懸命なんです。足掻くんです。たとえ無力でも、不器用でも。
読むと多くの人が知らない事実が語られ圧倒されます。しかし本作の見所は、珍しい事件ではなく、普通の人が苦しむときの深さを描いたことです。それがありふれたものであっても。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!読んだ方がいいです。
読みました。
中編の単発作品としての完成度の高さに驚かされました。
ストーリーについては他の方もレビューで書いており、僕が感想を書くのはもはや野暮なので書きません。
なので文章についてのみ言及させていただきます。
この作品登場人物の何気ない所作がかなり緻密に文章で表現されています。
こう言った描写は読者の目が滑ったり、読み飛ばされたりすることが多い部分ですが、この作品はそこに目を惹くような魅力がありました。そしてそれは登場人物の心情表現と移り変わり、登場人物の人間性に奥行きを持たせるのに何役も買っていました。
本当はもっと読んだ感想を感情的に伝えたかったのですが一周回って淡々としてしまいま…続きを読む