概要
彼女を忘れるということは 人の愛し方を忘れるということだった
海沿いの街、梶栗郷にひっそりと佇むファッションホテル『ピシナム』は、2019年2月にその歴史に終止符を打った。
ホテルマンとして働いていた青年の磯辺は、ライターの秋山千鶴から『ピシナム』の取材を持ちかけられていた。磯辺は取材を経たのちに、かつてホテルを利用していた女子高校生「R」との出来事を思い返す。
当時、ホテルを訪れる度に風貌の違う男を連れまわすRを、磯辺は次第に気に掛けるようになっていった。2人は顔を合わせることはなく、声を掛け合うこともなく、フロントと部屋を繋ぐ気送管ポストで手紙だけを送り合う。
そして磯辺は文通のなかでRの抱える秘密と孤独に気づき始める……。
ホテルマンとして働いていた青年の磯辺は、ライターの秋山千鶴から『ピシナム』の取材を持ちかけられていた。磯辺は取材を経たのちに、かつてホテルを利用していた女子高校生「R」との出来事を思い返す。
当時、ホテルを訪れる度に風貌の違う男を連れまわすRを、磯辺は次第に気に掛けるようになっていった。2人は顔を合わせることはなく、声を掛け合うこともなく、フロントと部屋を繋ぐ気送管ポストで手紙だけを送り合う。
そして磯辺は文通のなかでRの抱える秘密と孤独に気づき始める……。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!これは分断の物語。
3.11の被災者ではないが、当時、南東北で震度6弱の揺れを経験した者です。あの、永遠に続くかと思われた強烈な揺れ。今でも、緊急地震速報の警報音と、不穏な地響き、立っていられないほどの揺れ、直後の吹雪は、昨日のことのように鮮烈に覚えています。
巨大な津波で壊滅した海沿いもさることながら、原発の水蒸気爆発の瞬間まで。世界が終わるのだと感じていた日々でした。
わたし自身の感受性が強すぎて、震災から何年が経っても、当時の津波のニュース、復興前の土台しか残らない更地の様子などは、思い出すだに苦しくなります。
この大災害だけではなく、人と人との間には、どうしようもない分断が横たわっています。それは、わた…続きを読む - ★★★ Excellent!!!覆すことのできない断絶と、それでも残る小さな希望
読み終えたとき、Web小説という言葉から連想されるものとあまりに異なる独創性と文学性に飲まれ、ただただ圧倒されるだけだった。無言で★3を付けたものの、なぜ圧倒されたのか言語化することもできなかった。
一晩経って改めて考え、私なりに解釈した結論は、この作品は震災についての小説ではないということだ。
もちろん、震災で大切な人を失った人々がこの日本で私たちの隣人として生きていることは、忘れてはならない事実ではある。それを思い出させてくれるのも、この小説の美点ではある。しかしここで描かれているのは、あの災害だけに限定されない、覆すことのできない人と人との断絶である。
乱暴に例えるなら、米澤穂…続きを読む