クール失踪事件
13 越境
控えめな日の光を受け、高さの違う二つの影が歩いていた。赤提灯を左右に、小さい影が大きい方に寄り添うようにして。言葉は交わさないが、それは雰囲気が悪いだとか話題が尽きたとかそういう類のものではない。
二人はただ、あまりもの驚きで声が出ないだけなのだ。
「……どうしたらいいの、これ」
そう問いかけるのは、着慣れた黒のパーカーのフードで顔を隠すアリアであった。彼女が顔を隠すのは日の光を避けるためではなく、ほかに理由がある。
「……分からない。けど、とにかく他言するのは避けようか……」
隣で歩く直登も買ったばかりの帽子を目深に被り、似合わない眼鏡を掛けている。対抗戦で目立った活躍もない彼はそこまでして顔を隠す必要は無いが、アリアからの達ての希望で、帽子や眼鏡も彼女の
コツコツと小さく弾ける靴音が細い路地に響き渡る。人通りは少ないが、道が細い分すれ違うときには至近距離で顔を見られ、特に隣の彼女に向けられる視線は、前から一回、すれ違いざまで二回目、すれ違った後にもう一回と計三回は向けられる。
「あの人達もアリアが貰ったアレのことを知ってる訳じゃないと思うけど」
「アリア、って言うな」
そう言いながら直登の脇腹に軽く頭突きをすると、少女は更に深くフードを被る。
「(無理もないか。社会経験も無い16歳が一夜で超有名人になって10万ユーロも貰ったら……)」
試合後の今朝、直登は皆がこの大会にあんなに熱心になっていた理由が少し理解できた気がした。優勝者各三名にそれぞれ10万ユーロ(1ユーロ=約125円)とスポンサー賞諸々、準優勝チームにも一人3万ユーロとその他の賞品が与えられた。
小さな部屋での授与式だったが、その中にあるどれもが声が出そうになるほど煌びやかで、最後に白装束のアラブ人が何言ってるのか分からないまま長々と話しかけてきた時は直登も「ははっ、はははは」と乾いた笑いをするしかなかった。
「ま、それもあと少しだから」
直登そう言いながら少女の肩をポンポンとそっと叩く。最早このくらいで拒絶される仲ではなかったが、それでも彼女に触れるときはいつも気を遣ってしまう。
「……うん?」
フードを僅かにずらし目に光が入る。一瞬の点滅の後、少女の目に映るのは幅広になった道路と、古びた木橋、そしてその前に立つ担任教員の姿。
着こなした上下黒のスーツ、そのポケットに片方の手を突っ込み、メールでも打っているのかスマホに向かって忙しなく指を動かしている。それにしても相変わらず隙が無い。アリアは思わず目を細めてしまった。姿勢もそうだが、やはり魔力の質が違う。
通常魔力は体をコップに魔力を水に例える。魔力量、つまり水の量が増えると使える魔力は増えるが、それに対してコップが小さすぎると水は溢れ出てしまう。そうして体の外に漏れた魔力も使えないことは無いが、流れがある分扱いが困難である。
しかし、彼の魔力は止まって見えた。否、止まって”見えた”のではない。実際に止まって”いる”のだ。その恐るべき技量で水の表面張力を何万倍にも高め、コップが無い所にも仮想的なコップを作っているのだ。
直登達が二、三歩近づくと賀茂はわざとらしくぴくりと跳ねた。
「おうおう、これはこれは。金持ち少女と、イクジ・ナッシーじゃないですか」
「……なんで、知ってんですか」
「……そりゃあ、それなりに有名だし」
それを聞いた瞬間直登は固まる。言うか、普通。という言葉と同時に赤髪の少女の片目を閉じて舌を出す仕草が頭に浮かび、思わず手を当てる。不幸中の幸いは、隣のアリアがいまいちピンとこない顔をしていることだろう。
「まじか……」
それでもバラ色のキャンパスライフが瓦解していく音が止むことはなかった。
「え、なにが」
「と、三分の一が絶望したところで帰りますか、イタリアに」
「だから、なにが」
それは慈悲からか、賀茂はアリアの問には答えようとせず木橋を渡る。直登もそれにゾンビのように付いて行った。
少女は不服そうに
緑色の川の上、軋む木橋は水面に影を落としている。ヘドロと香辛料が混ざった香りは三人を追っていたが、開かれた扉の前ではたと止まり徐々に薄れていた。
暗闇の中、一人の男の声と共に光が舞い三人は姿を消す。それは12月2日のことであった。
ミラノから鉄道で三時間弱、アルプス山脈を間近に臨む小さな街は昼の賑わいを過ぎ、落ち着きを取り戻しつつあった。
三日の間緯度の低い所に居たからだろうか。頬に触れるおろし風のキリっとした冷たさにいつも以上に身震いを誘われる。防寒対策にコートを羽織り、首元にはマフラーも巻いてきた彼であったが、それでも十分ではなかったようだ。
「……頼むから運休だけはやめてくれぇ」
イタリア・ティラーノ、山に囲まれた小さな町である。そこにある唯一の駅の小さなホームで直登は電車を待っていた。
出発予定時刻はすでに過ぎ、彼を含めホームに立つ乗客は祈るような目で左方を望んでいた。彼らが最も恐れているのは、遅延による急な電車の運行取り止めである。都市部では頻繁に見られ誰も文句を垂れることの無いことだが、極寒の地で更に40分に一回しか電車が来ないティラーノでの運休は訳が違う。
「……おっ!来た来た。なんとか最悪は免れた」
ふう、と白い息を吐く。現代的な民家の隙間を縫い視界に現れた赤い車両。アルプスの山麓を超え、イタリア・ティラーノからスイス・クールを五時間かけて結ぶその急行を彼は待っていたのだ。
「なにげに真っ当にイタリアから出るの久しぶりか」
そんなことを言いながら、彼はもう一度白い息を吐いて深く吸う。空気が美味い。それはボローニャや今住んでいる魔術都市・アルテイアよりも澄んだ、穢れの無い純粋な空気であった。
「それにしても、しんどい……」
既に長時間の鉄道度で寒さ関係無く足が震えていた。何故こうなってしまったのだろうか。
―――
転移は無事成功した。直登的には無事成功”してしまった”感があるが、それはもうしょうがないと割り切っていた。三日前のことを思い出すに、転移で彼女に会えるかどうかは彼女の気まぐれなのだろうと予想出来ていたからだ。
早朝の冷え込みの中、三人は転移紋が刻まれている大部屋出て廊下を歩いていた。
「今日は、このまま解散ですか」
直登がそう尋ねると、賀茂は低い天井を見上げ一瞬考え込む。
「いや……うん、ま今のところそうかな、まあ……」
歯切れの悪い、含みのある返事の後に彼はにやりと笑う。あまり見たくない顔を見た二人は、賀茂の後ろで目を合わせ「流石に何もないでしょ」と半ば祈りの言葉を交わし、互いの気を紛らわせた。
「おう、魔術事件課からメールですねえ」
一瞬にして楽観的な予想は崩れ、直登はわざとらしく腰を後ろに反って天を見上げる。
「『スイス・クールで人形使いと思しき魔術師による殺人が相次いでいる。賀茂劉基とその担当生徒は本日午後7時より現地にて―――』とまあ、こんな感じだから14時間後に現地集合で、細かいことはそこで話すから」
賀茂はそう言うと、二人を置いてそそくさと走り去って行く。その背中はどこか嬉々としていて、走るというよりかは弾むと言った方が正しいように思えた。
―――
ふぅ、と何度となく目の前を曇らす。この一日で特に何かをした訳でも無いが、二日に渡って慣れない戦闘を繰り返したせいか心身ともにかなりの疲労が溜まっていた。今ここでふらりと倒れたらどうなるだろうか、途轍もなく気持ちいいのは確かだろう。そんな妄想までもが頭を過る。
「―――やばッ!」
呆然と立ち尽くす隙に、いつの間にか到着していた電車の扉が閉まりかけていた。直登は一歩左足を踏み込み体を沈めると、その反動を使って前蹴りを入れるようにして飛び乗った。
「(ギリセーフかな……座席は……っと)」
彼はスマホを見ながら指定席まで向かう。外からも見えていたが、観光列車ということもあってとにかく窓が広い。膝下の高さから天井に食い込むくらいまで一枚のガラスが張られていて、窓と窓の間には僅かに幅20センチほどの仕切りがあるだけだった。そしてウィンタースポーツのシーズンだからか人も多い。ほぼ満員ではないだろか。
「(まずいよなあ……こんだけの人が連続殺人が今起こっている地域に行くって。しかも、魔術関連の事件だから報道も出回らないもんな)」
友人と、家族と、恋人と旅へ向かう乗客を左右に直登は歩き続ける。
「……ここか」
ぽつりと呟いた直登はスマホに目を向けたまま二人席の前に立っていた。どうやら隣にも客がいるようだ、深緑のコートと赤く染まる長髪が視界の端で揺れている。
「(……うん?赤髪……?)」
どこかで見覚えがあるような、と思うと同時に悪寒が走り顔上げる。
「うえ”ぇ!?」
「げぇ……」
そこには半開きの口のまま、その大きな目を更に開いて直登を見るルネ・ルロワが座っていた。
「で、なんで君が乗ってんの」
黒のレザーシートに深く腰を掛けた直登は、隣に座る赤髪の少女の奥に流れる景色を流し目で見ていた。窓の中は未だ市街地を捕らえ、二人掛けの座席の上は、重苦しいとまではいかないが居心地の悪い空気になっている。
「仕事が回ってきたからね。多分イクジナシ君のところと合同で」
「意気地なし言うな……って、昨日のアレ広めてるだろ!頼むから止めろよ!!」
直登は釘を指すようにルネを睨む。薔薇の色などとっくに薄れたが、キャンパスはグレーに染まり切ったという訳でもない。今ここで被害を抑えておきたいのだ。
「え?なに、広める?広めるって何を……」
それまで窓の外を見ていた彼女も思わず直登の方を向いた。その顔には少しの陰りと引きつった笑み。先までのどこか直登を下に見たそれからは打って変わり、何かを危惧しているような顔。
「ま、まさか……」
一瞬の間に移り変わる彼女の表情を見て、それに同調するように血の気が引いていく。
「私、誰にも言ってない……」
「……やば」
心の底から漏れ出る言葉と共に脳内で飛び交う推測の数々。監視カメラ、隣のベット、窓の向こう側、廊下を歩いていた生徒、いくら挙げたところで辿り着く答えは一つだ。それも、もう取り返しのつかない残酷な答えで―――
「「見られてた?」」
顔を見合わせ合わせた答えは二人を絶望と羞恥の坩堝に落とす。一人は窓ガラスに額をあて両腕で顔を覆い、一人は膝に付いた手で頭を抱え、何分かに一度どちらかが悶える時以外はその状態のまま何かに耐えていた。
「そういえば、一つ聞きたいことがあるんだけど」
国境は遥か前に過ぎ、列車はスイスの雪景色を走っている。一時間は経っただろうか、平静を取り戻した彼を横に突っ伏したままのルネはその声にぴくりと反応した。
「さっき、”俺達と合同で”とか言ってましたよね?」
彼女は不機嫌そうな顔と共に振り返り、こくりと頷く。
「なら”人形使い”って何か知って―――」
直登がその続きを言おうとしたとき、ルネの手は抵抗する間も与えずに彼の口を覆う。瞬間、立つ花の香りと迫る唇。”禁忌”の言葉を彼が思い出すのに何秒も掛からなかった。
「ダメだよナオトくん。誰かに聞かれたら……」
彼女は耳元でそう囁く。そういえば、アリアが授業で言っていた。魔術界には何項にも及ぶ禁忌の法があると。そしてそれを破った者は然るべき機関から厳罰が下り、最悪の場合その生を絶たれるとも。
魔術や魔術に関する事柄の流出もその一つ。魔術師が原則として夜に活動するのもこのためである。
はっと、直登が己の過ちに気付いたのを感じ彼女は更に声を細める。
「二分後、デッキに来て」
そう言うと彼女は返事を待たずに去って行く。直登も彼女を見送ることなく、前を向いたまま二分のカウントダウンを始めた。ふと窓を覗くと、かなりの間山を登っていたのであろう、針葉樹の森が雪上に広がっている。
「……そろそろ、か」
揺れる車内を直登は早足で歩く。単純に好奇心を駆り立てられているからだ。
直登がボローニャで襲われた際に耳にした”人形使い”という単語。それからベネチアで聞き、今回もそうだと知らされた。しかし、彼は何も知らない。ただ流されるまま、目の前に出された課題を
「おう、ほんとに居るんかい」
デッキには扉を背に立つルネの姿があった。『デッキに来い』と彼女が言ったから当然なのだが、それでも直登は危機管理的な面からその言葉を信じてはいなかった。
「おう、人払いはしてあるから安心しなよ、おうおう」
「ああ、流石に……」
茶化すような言動は敢えてスルーしてみたくなる直登であった。
「だから、ナオト君が私に何をしようと誰も気付かない。君が私のあんなとこやこんなとこを触っても、そのまま、あんなことやこんなことしても―――」
「お顔が真っ赤になってますけど続けますか?」
直登に指摘されるとすぐにルネは口を閉じ横を向く。逆光で陰になっていても分かるくらいに彼女の顔は赤く染まっていて、一文字に閉じられた唇はプルプルと震えていた。
「それで、”人形使い”の事なんだけど―――」
その言葉は少女を真剣な眼差しに変える。
「……何が聞きたい?」
「何もかもだよ。その名前を聞いて、そこそこ関わってきたけど、俺は何も知らない。知ってることだけ全部教えてほしい」
「そうか、そうだね。じゃあまずは―――」
2年前、欧州全土31カ所で同時多発的に起こった魔術事件。僅か半日の間で無差別に1500人以上を犠牲にしたその事件は、公には過激思想を持つ宗教団体が起こしたものだと報道された。
しかし、それは実情とは全く異なる表向きの情報。真実は魔術界にのみ広がった。
まず、無差別殺人ではなかった。殺されたのは東洋人に限る1532人。その中には魔術師14人も含まれる。そして、全ての現場には必ず二種類の魔力が残されていた。一つはおそらく事件を起こした当人の魔力、もう一つは全ての現場に共通して残っていた微細な魔力。
後日鑑定された結果により式神や精霊といった類によるものだと分かったその魔力は、一人の強大な魔術師の下で何やら犯罪組織が蠢いていてることの証明になった。魔術界はその組織の名を”人形使い”と呼称し、以後の徹底的な撲滅を決定した。
「それでもこれまで捕らえた人形使いのメンバーはほんの数人で、組織の情報も大まかな組織体系しか分かってないけどね」
「大まかな組織体系って、どの位分かってんの?」
「人形使いは一人の魔術師の下で、ヨーロッパを東西南北中に分けた5人の幹部と、各国に一人ずつの代表が35人。その下には数え切れないくらいの魔術師が属しているってのが私が知ってる情報」
「その数人は結構口滑らすのね」
意外にも杜撰な管理体制に直登は呆れ交じりの言葉を放つ。考えてみれば無数の人間を配下に置いて且つ、情報を漏洩させない組織など数える程にしか無いが、それでも話し始めた当初に比べると”人形使い”に対する得体の知れない恐怖が少しでも和らいでいた。
「確かに、口は滑らすけど、ね……」
彼女は含みのある言い方をした直後、はっと頭上に電球を浮かべる。
「そういえば、私もナオト君に聞きたいことがあるんだった」
「……なんさね?」
「昨日は勢いと流れで納得したけど、やっぱり、ナオト君の”女の子好き好き絶対傷つけないスタンス”はおかしいと思う」
瞬くこと三回、その間には車輪がレールの継ぎ目を渡る金属音のみが響いていた。
何の話をしているのか分からなかった直登は、記憶を辿り”女の子好き好き絶対傷つけないスタンス”に該当する箇所を探す。
「あぁ、あの時の……」
思い出したのは白いベッドの上。追って迫りくる淡い記憶は必至に押し戻す。
「そう、その時。私、思うんだ。確かにナオト君が言ってたように、人が人を傷つけることが正しいことだとは思えないよ。でも、それは覚悟の無い人に対してだけ適用して良いスタンスだよね」
「……うん?」
いまいち話が見えない彼は、曖昧に頷くことしかできない。一方ルネは、先日の責めたてる口調ではなく、幼子に物を教えるように優しく、冷静に話を続ける。
「ナオト君にとっては可笑しいことかもしれないし、今考えてみると私自身どうかしていたと思うけど、私、あの時、覚悟があった。君に殺される覚悟も、君を殺す覚悟も」
「……」
「覚悟がある人に、覚悟の無い人間が”理想的で理性的な倫理”だけ持って戦うことって……私はすごい、空しいと思うよ」
「あぁ―――」
そうか、これは”聞きたいこと”ではない”言いたいこと”なんだ、と直登は悟った。そして返答でもある。昨日、一方的に押し付けた自分の価値観への。
「それでもナオト君は、覚悟のある”女の子”を前にしても、まだ傷つけるのを躊躇して、手を抜くの?」
「……」
返す言葉が見つからなかった。”覚悟”とか、今まで考えもしなかった単語を前に身動き一つ取れずにただ立ち尽くしていた。分からない、処理できない。
今でも女性に対して力を行使することは可笑しいことだと思っている。それに、アンヘルが対抗戦決勝で勝利の雄叫びを上げた瞬間、感じた嫌悪感ははっきりと思い出せる。しかし、そこに”覚悟”の二文字が入ると、今まで自分が抱いていた信念が崩れてしまう気がして。
「いや、これは”信念”なんて高尚なものじゃないのかもな」
「急にどうしたの」
「……なんでもない。なんてこともないけど―――」
目を逸らしていただけなのかもしれない。今まで犯した罪から、それに伴って生まれた罪悪感から逃れようと。
「少し、考えてみるよ」
直登の答えに、ルネは微笑んで頷く。列車は雪景色の中、山と山を結ぶ名所の橋を前に緩やかにスピードを落としていた。もう、座席に戻ろう。そう、直登は振り返る。
刹那、視界の端に煌めく一筋の光。邪悪な意思は、魔力と共に届き―――
「『
間に合うかどうか、最小限の詠唱と限界ギリギリの強度。自分と、隣に立つ赤髪の少女を囲むだけの最低限の大きさだった。
「えっ―――!?」
結界が閉じ切るとほぼ同時に、凄まじい轟音を伴って前方からくる途轍もなく巨大な斬撃。乗客を乗せていたはずの鉄の塊が前方から塵と化し、斬撃は二人の頭上を通って最後尾まで一瞬にして届く。
「なにが、起こって……!?」
気付けば列車は天井と壁の大部分を失い、直登の一からでも目の前の一本橋が望めるようになっていた。
そして、橋のちょうど真ん中ほどに立つ一人の男。この時期に、この山で、半袖短パン。腰には長剣を携え、鼻の先まで伸びた髪の下から直登達を覗く。
「チッ、クソが二人残ってるじゃねえか。あの紅い髪は森の令人か、クソがッ、めんどくせえ。……おい、待てよ。もう一人は、アレ、東洋人じゃねえか?オイオイオイオイオイッマジかァ!!大手柄じゃねえか!!!」
あまりにもでたらめで、邪悪な魔力。距離はあるものの、あの一撃から受けた衝撃からか直登とルネは戦闘態勢に入っていた。
後方は鉄屑に塞がれ、退路は無い。油断を見せれば即、死。
「覚悟の使いどきか」
言葉に勇気を。震える足に鉄槌を。立ち向かう二人は、行く手を阻む恐怖を象った男をキッと睨む。
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