第17話 絶望と真実

秘密裏に召集されたジャック達は、車に乗る為に駐車場へと向かった。

車で軍の飛行場まで向かい、航空機で地元まで戻るのだ。


だが、駐車場の上空にはアースガード三機が待ち構えていた。


「来るなと言っておいた筈だが、まさか宇宙怪獣の飛来か?」


三人に緊張感が走る。


特定の人間以外には知られてはいけない秘密の会議だ。

目立たぬ様にアースガードには本国の基地待機を命じておいた。


例外があるとすれば宇宙怪獣だ。ベヒモスまで来るなら、余程の強敵なのだろう。

三人は、アースガードへと取り込まれて行った。





そこは操縦席ではなく、かつてアースガードと初めて接触した時と同じ【光の空間】だった。


「お前達も居るのか?」


だが今回は一人ではなく、左右に他の二人の姿も見える。

手に触れられないところを見ると、立体映像なのだろう。


「フェニックス、これはどう言う事だ?」

「何か、嫌な予感がする」


ジャックの問いに、岬が続いた。


〔御三人に、御報告があります。宇宙怪獣の驚異も去り、国の代表の方々への報告も終わった様なので、役割を終えた我々は帰還致します〕

「やはり、ソレか?」


岬が、予想していた通りだった様だ。


〔無言で去るのも考慮したのですが、挨拶くらいはするべきと判断しました〕

「確かに、これ以上助けてくれないなら用済みだな。今まで世話になった」


イワノフは多少、投げやりだ。


〔御礼を申し上げるのは、我々です。今まで好戦的な技術供与などを頂き、守っていただいてありがとうございます〕


機械は、言い間違いをしない。


その事を理解している岬が、補助脳の言葉に引っ掛かった。


「守る?いや、守って貰ったのは、俺達の筈だが、どう言う意味だ?」

〔当初、宇宙怪獣に追われていたのを、戦う知恵を授けて助けてくれたのは、貴殿方あなたがたです。貴殿方に助けて頂けなければ、私の任務遂行は困難だったでしょう〕


三人の顔に疑問が生まれた。


「任務?」

〔これ以上は、貴殿方には不要な情報です〕

「不要な情報だと?」

〔はい。世の中には、知らない方が・・・・・〕

〈面白いじゃないか〉


割り込んできた、数年ぶりに聞く声に戸惑ったが、確かに聞いた事のある声だ。


「宇宙人?」

〈介入するつもりは無かったが、君達には真実を伝えた方が面白いとも思ってね〉

〔御意志のままに〕


「【面白い】だと?」

〈聞くか聞かないかは、選択式だ。自己責任と言うやつだね〉


三人は、顔を見合わせて頷いた。


「わかった。聞かせてくれ」

〈了解した。聞いて後悔してくれ〉


三人は顔をしかめた。


〈まず、地球人は宇宙怪獣により被害を被ったが、アレは地球の敵じゃない〉

「このアースガードの敵だと?」


ジャックが金星人を名乗っていた女性の言葉を引用した。


〈例の【金星人】か?正解だ。以前に『地球は宇宙からの生命体に脅かされている』と話した。会話では濁しておいたがソレは具体的には【我々、宇宙人】だ。地球だけではなく、この太陽系全体を脅かして居たのだが〉


確かに明確に『怪物に』とは言われていない気がする。


〈そして『我々は知性体を求めて宇宙を旅する者だ』と言ったが、それは数多の銀河を渡り歩いているのだ。君達には銀河を渡るのに、どのくらいのエネルギーが必要か、想像がつくかね?〉


地球では、隣の惑星に調査機械を送るのが精一杯だが、かなりのエネルギーを必要とするのは理解できる。


「まさか・・・」

〈察しが良いねぇ。動力源に使える【小さい恒星】は、大変に稀少でね。他に代用できる物は少ないんだよ〉


地球が回る太陽は、銀河系でも小さい部類の恒星だ。

大きな恒星を動力源として使うには、見合った巨大な【動力炉】を用意する必要がある。


「じゃあ、【キャッツアイ】を起こしているのは、お前達なのか?」

〈正解だ。因みに太陽から得たエネルギーの一部は、このアースガードの活動と兵器にも消費されている。タネを明かせば簡単な話しだろう?〉


アレだけのビーム兵器や重力制御、慣性制御など、膨大なエネルギーを消費するだろう。

補給無しで、その様な力が長時間使える訳が無いのだ。


「ならば、宇宙怪獣はナゼ?アースガードの指命とは何だったんだ?」

〈【宇宙怪獣】かぁ。アレは、この太陽系に住む、他の知性体の防衛兵器だよ。我々の計画を妨害していたんだ。計画は物量をもって進めていたんだが、我々も【キャッツアイ】をコントロールしているユニットを守り切れなくてね〉


岬達にも話が見えてきた。


「逃げて地球へと辿り着いた【コントロールユニット】が、【アースガード】って訳だ?」

〈その通り。宇宙空間を逃げ続けるにしても、太陽から離れすぎるのも困るんだよ。これで、辻褄は合うかな?〉


幾つかの不明なピースがはまった。


「では、俺達を騙していたのは・・・」

〈あえて言わなかった事を除けば、具体的には『君達を助ける』って点だけかな?かなり正直者だろ?〉


上手に嘘をつくには九割の事実に、一割の嘘を混ぜて、不必要な事は言わないのが一番だ。


当然だがタイミング良くやって来る、都合のよい甘い言葉を信じてはいけない。


安易に物事を解決できる特殊な力は手軽に手に入らない。

入るとしたら、必ず【裏】がある。


これらは、謀略に巻き込まれる時や、麻薬中毒にされる時の定番エピソードとも言える。


〈どうだい?後悔したかな?〉

「口調からすると、俺達に接触しなくても、逃げ切った可能性は有ったんだな?」

〈勿論だよ。ただ、君達のおかげで効率は非常に良くなった〉


この期に及んで激昂する者は居なかった。


ネオペストに、太陽を覆い尽くす巨大な力。

既に絶望的状況にある為か、皆が気力も失せていたのだ。


「多少早いか遅いかの違いかぁ?あ~あぁ、後悔した後悔した」


アースガードに出会う事によって、多少のメリットがあったイワノフが、楽しそうに返した。


どうやらネオペストは、この宇宙人とは関係無さそうだったからだ。

陰謀説を信じるならば、恨むべきは地球人そのものだからだろう。


「用事が済んだなら、返してくれないか?どのみちアンタ達には敵わないんだろうし、残された時間を娘と一緒に居たいんでね」

〈ドライだね?イワノフ君は〉


その声を最後に、眩しい光に包まれた三人は、地上に帰っていた。


上空には、白い楕円形の物体が、三個浮かんでいるのが見える。


ジャック等は、駆け付けたシークレットサービスに、身柄を確認された。


「三人とも大丈夫ですか?」

「あぁ、問題ない。ただ、アースガードが宇宙へと戻るそうなので、御偉いさんに伝えてあげて下さい」


イワノフは、そう告げると、サッサと車に乗り込んだ。


「今さら、何を言っても始まらないだろう」


ジャックも車に乗り込んだ。


「とんだ貧乏籤びんぼうくじだったな」


岬め車に乗り込み、ドアを閉めた。


走り行く車を見送ってから、無線をとばしたシークレットサービスは、頭上を飛び去る三つの球体を見上げた。


曇った空には、若干変形した太陽が見えていて、白い妖精が降り始めていた。












ジャック達の太陽系から光が消えて、約一億年後。


その太陽系に近付く巨大な物体があった。

一見、植物の花の様にも見えるソレは、左右対称であり、明らかに人工物だ。


わずかに各所が輝くソレの大きさは、約20,000万キロメートル。

およそ金星の公転直径に匹敵する大きさだ。


太陽系の全ての物質が、その質量に引かれて動き出した。

岩石や氷の惑星は砕け、気体や液体の惑星は、変形しながら吸い寄せられていく。


それまで太陽系の中心を微動だにしなかった太陽も、大きく軌道を変えて、その物体に吸い寄せられている。

見ると、光が消えて久しい太陽の所々に、小さな光が点滅を始めていた。

途端に太陽だった直径140万キロメートルの球体は動きを変え、まるで花粉の様に、巨大な花の雌しべの先に接合した。

近くには、同じような球体が幾つも付着している。


太陽系に存在していた岩塊達は、ソノ巨大な物体に衝突していくが、埃が付着する様なもので、一切の影響はない。


彼方から見れば、ただ巨大な花が宇宙空間を通過しただけにしか見えない、巨大な宇宙船の移動と燃料補給。


宇宙の事象の大きさは、我々の認識の範疇外にあるらしい。



ーーーーー END ーーーーー



一部加筆しました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



設定


Aアスターズ  恒星侵食力

Pフェニックス 火力飛行力

Rリバイアサン 速力潜水力

Bベヒモス   剛力圧搾力


単独では

P多数の敵を同時に攻撃

R多数の刃での接近戦闘

B遠距離射撃と格闘技戦

に特化している。


合体モード

AーPRB

飛行ビーム攻撃タイプ

接近戦は刀を使う


BーPBR

飛行ビーム攻撃タイプ

接近戦はボクシングスタイル


ΓーRPB

海中斬撃攻撃タイプ

遠距離攻撃は誘導ビット


ΔーRBP

海中斬撃攻撃タイプ

遠距離攻撃はソニックショット


ΕーBPR

地上格闘攻撃タイプ

遠距離攻撃は長距離砲


ΖーBRP

地上格闘攻撃タイプ

遠距離攻撃はソニックダガー



実際には、PRBがAをコントロールしているメインシステムである。

各惑星からは太陽のAを攻撃するのと平行して、コントロールシステムであるPRBを破壊しようと、地球の各ユニットへ向けて広域攻撃を行っている。


主人公達の所に、集中して宇宙怪獣がやって来るのも、ソレが理由なのだが、『地球侵攻の障害になる【PRB】を真っ先に潰す気だ』と言う言葉を信じ、『地球防衛の要』と呼んでいる。


PRBは、戦闘特化した地球人の技術を入手して身の安全を図る為に、人間に取り入った。

地球環境に適した戦闘データは、当初は他者を凌駕した。

後半は、特にアニメなどの情報が想定外の効果を産み出している。

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巨大ロボット アースガード 二合 富由美 @WhoYouMe

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