概要
「この腹はからっぽ! なーんにも入ってないの。ぜんぶからっぽ!」
捨てた思い出と、忘れた名前と、隠した感情を、海に拾いに行く話し。
「カラのはら」
たった一通のメールで再会できるかは、僕とあの子の選択だけで決めるべきだった。海で会おう。夕暮れの手前で会おう。お互い嫌いだと言った、いつもの電車に乗って、会おう。
「靴箱とハンガー」
人生悪いことばかりじゃない、いつかいいことがあるよと言われるのは何度目かだった。会おう、と素直に言えずに春が来た。寒い夜に、鍋をしようと、ふと思った。
「シュガースティックの舌先」
日当たりのいい部屋であることと、寝室を二つつけることが、新居の条件だった。小さくて狭くていい。便利な立地じゃなくていい。花屋が近くにあったら嬉しいかもしれない。あとは野となれ山となれ。
「揺籃」
わがままを言うことは、いつも怖い。
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