第40話 憧れの存在[ルイ編]
(こんな危機的な状況で、笑うなんて……)
イザナくんのあまりにも自信ありげな表情を見て、[
「イザナくん![
「やばいって、どうやばいんだ?」
「既に討伐されたって噂の第五階層に出現する "海獣王" って隠れボスは今のトッププレイヤー百人が集まって二十分くらいで討伐できるくらいの強さなんっすよ……」
「へぇ……ちなみにあの竜は?」
「二千人くらいが集まっても四十分以上はかかると思うっす……僕たちだけじゃ勝てる見込みはないんっすよ」
僕がこれだけ強力な存在であることをアピールしても、イザナくんの余裕そうな表情が崩れる様子はなかった。
「なあ、ルイ。オレのこと信じてくれるか?」
その言葉を聞いて、初めてパーティーを組んだ際にも同じことを言われたことを思い出した。
(……あの時は渋々って感じだったっすけど、今は……)
———他に頼れる人はいない。
「イザナくんのことは信じるてるっすよ」
そう伝えると、イザナくんが笑顔を見せた。
「あ、そうそう。一ついいこと教えておくよ」
「いいこと?」
(……この場面でいいことって何なんだろうか)
「第五階層の "海獣王" を倒したの——オレだから」
「え?……一人でっすか?どうやって?」
「どうやって……って、ビーチボールで貫いた」
「ええええ?!なんっすかそれ?!」
1人で "海獣王"を倒すだけでも理解不能なのに、そこにビーチボールで貫くって、日本語以外の言語を話しているようにしか聞こえないレベルだった。
「そろそろ頃合いかな」
イザナくんはそう話したが、あれだけ巨体だった[
「こっから攻撃するんっすか?」
「ん?そうだけど?」
僕が驚く様子を横目で見ながら、イザナくんはスキルを唱えた。
———「【
イザナくんの右手から禍々しい "闇"が渦巻き、それは大きな鎌の形に変形した。
「それで……どうするんっか?」
「こうするんだよ」
イザナくんは闇色の鎌を上空に放つと、空中で大きさがその辺の街一つ分はあるのではないかというほど巨大化に変化した。
[
イザナくんはそのまま大鎌で[
その時の風圧が岩山の方にも飛んできて、僕たちが立っていた場所の隣にあった岩山が真っ二つに裂けた。
「……はは。イザナくんは、絶対怒らせちゃダメっすね」
——[
—— 【
——レベルが上がりました。
——レベルが上がりました。
「や……やったっすーーーーー!!!!!」
システムのログから、僕は念願の【
「おめでとう、ルイ!」
「ありがとうっす、イザナくん!本当にありがとうっす!!」
僕はステータスリストをポップアップさせ、職業のところを眺めた。
——職業【
その表記を見て思わずニヤニヤしてしまう。
(——これでギルドメンバーも……)
そう思った時、自分が何を目的にすべきなのか、どうなっていきたいのかがハッキリしたような気がした。
(僕が成りたかったのは、ギルドマスターじゃない……強い力があって、困っている人を助けることができる存在だったんだ——イザナくんのように)
「イザナくん……今まですまなかったっす」
「ん?なにが?」
「ううん……僕、ギルド解散するっす」
「え?」
「成りたいものが……憧れの人が見つかったんっすよ。そうなれるように、また一から修行っす」
「そっか……じゃあこれは餞別ってことで」
餞別と話すイザナくんがくれたのは、[
「これ!(C)ランクの武器とか防具できちゃうっすよ?!」
「オレは使わないから、もらってくれよ。それで次に会う時にはかっこいい【
「イザナくん……本当にありがとうっす!!」
そうして、僕の手伝いを終えたイザナくんは行ってしまった。
「約束は守るっすよ。イザナくん!」
彼が去っていく背中に向けて拳を突き出し、僕は必ず【
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます