第12話 報酬[第1階層編]

 オレは【緊急クエスト】クリア後、真っ直ぐに宿屋へ向かい体を休めることにした。

 早急にHPを回復させる方法があったからだ。


 オンラインNOW!でHPを回復させる方法は3つ。


 ①回復ポーションを使用する。


 ②ヒーラーである職業からのスキルによる回復。


 ③宿屋で休む。


 で、初期のポーションは高価なくせに、効果は少ないという方法。


 ヒーラーの回復量も現時点ではそこまで大きくないことから、③の宿屋で休むを選択したのだった。



 HP自体は数時間で回復していたが、目が覚めた時には、時計は午前11時を示していた。


 どうやらログイン状態のオレ自身も普通に疲れは溜まるらしく、睡眠を取ったりする必要はあるみたいだった。


 まだ少しボーッとしてはいたが、オレは昨日の報酬を確認しするため、ステータス情報を開いた。


 そこには"牛魔の妃姫"の+300と"牛魔の帝王"の+700の合計1000がきちんと加算されていた。


「今回のは2つの【緊急クエスト】がセットになってたってことだったんだな。何にせよステータスポイント+1000は破格すぎるな。」


 お約束通り、このポイントは全てAGI(素早さ)に加算する。


 これで暫くその辺のモンスターからの攻撃は、完全回避できるだろう。



 オレは改めてステータスを見直してみる。



【ステータス一覧】

【名前】イザナ

【レベル】6(106)※

【メイン職業】狩人(物理系統分岐職)

【サブ職業】未解放

【スキル一覧】

 ☆マナコントロール☆ダブルアタック☆神速

(NEW)


 ※"角兎"クエスト100回クリア時にレベル5→6にUP


 HP(体力):600

 MP(魔力):12000

 ATK(物理攻撃力):180

 MATK(魔法攻撃力):51600

 DEF(物理防御力):50

 MDEF(魔法防御力):11

 AGI(素早さ):1071

 CRI(クリティカル):1


【装備一覧】

 武器(手):なし

 防具(頭):なし

 防具(体):冒険者の服(E)

 防具(腕):なし

 防具(足):冒険者の靴(E)


【状態異常】

 魔神王の呪い

 覚醒者の兆し



「そう言えば、オーバーキルボーナスでユニークスキルを習得できたんだったな。」


 【神速ソニックムーブ】というスキル名は確かに初めて耳にするものだった。


 ちなみにユニークスキルは、全プレイヤーの中で1人しか持っていない専用スキルのことだ。


 早速スキル詳細について確認してみよう。


神速ソニックムーブ】(NEW!)

 →神の如き速さを用い瞬時に移動するユニークスキル。視認できる対象1体との距離を一瞬で詰めることができる。再使用時間は30秒。



「おお!めちゃくちゃ神スキルじゃん。」


 30秒のタイムラグはあるものの、対処への距離を一瞬で詰めれるなら一気に不意をつくこともできる。

 これで戦闘の幅もかなり広がるはずだ。


「あとはこれか……。」


 次に入手アイテムである"牛魔法の角"を確認する。


 ○牛魔王の装備専用アイテム

 →巨大な力を宿した牛魔の帝王の黒い角。加工すれば強力な武器になるかも?




「加工ってのがミソだよな。街に加工屋……ってか鍛冶屋はまだ出てこないし、鍛治スキルを所持している上位職業である“超鍛冶職人マスターメイサー"はレベル20〜の職業の1つだしな。これは暫くアイテムBOX行きだな。」



 報酬の確認を終える頃には、すっかり頭も冴えていたので、オレは宿屋で食事を取ることにした。


 ♢


「おはよう。よく寝れたかい?」


 少し小太り……いや、失礼。ふっくらとされたNPCの店主である女将が声をかけてきた。


「ええ、ちょっと寝過ごしちゃったみたいで。ん?」


 よく見ると、宿屋の食堂のテーブルにはまるで準備されていたかのように湯気が立ち上がったパンやスープ、お肉料理などが乗せられていた。


「あれ、ここでご飯頂こうかと思ってたんですけど、他の人の予約入ってました?」


 正直お腹はかなり空いていたので、美味しそうに湯気と香りのたつ料理を前にして今すぐにも食事をとりたくなり非常に残念な気持ちにかられた。


「いや、これはあんたにだよ。このカルディアを救ってくれた英雄なんだろ?そろそろ起きる頃かなって思って作ったばかりなのさ。」



 ……へ?カルディアを救った英雄?



 聞き覚えのない言葉だったが、この美味しそうな料理をオレのために準備をしてくれたと言うなら、遠慮なく頂こう。


 すぐさま椅子に着席し、声高々に


「いただきまーす!!」


 と両手を合わせる。



「はいよ。おかわりもあるからたんまり召し上がり。」


 焼きたて熱々のパン。

 体の芯まで染み渡る程よい味付けのスープ。

 口の中に入れるだけで簡単に崩れていくほど柔らかいお肉。



 あぁ。食事って最高だな。



 さすが五感全てに感覚共有されてるだけあるな。

 よし、おかわりもたっぷりいただくことにしよう。



 ……食事をじっくり堪能した後、オレは次に何をするかを考えていた。



「やっぱ武器壊れちゃったし、まずは武器屋だよな。」



 女将さんに礼を言い、宿屋出たオレは真っ直ぐ武器屋に向かった。



 ♢



「お!兄ちゃん、カルディアを救ってくれたんやってな!あんたはカルディアの英雄やで。」


 まさか武器屋のおっちゃんにまで、英雄扱いされるとは。


「いや、オレは英雄なんかじゃ……。」


「いや、そんなことはあらへんで。兄ちゃんがカルディアの危機を救ってくれたんやろ?」


「カルディアの危機?どっかで聞いたような……。あっ!」


 もしかして【緊急クエストⅡ】のクエスト内容に表示されてた、カルディアを護れってやつか。


「どうやら心当たりがあったみたいやな。」


「いや、たまたまそうなったってだけですけどね。」


「いや、ええんや。ほんまにありがとうな。何か礼ができたらええんやけどな。」


「いやいや、そんなのいらないですよ。」


「謙遜せんでええで。ん?……兄ちゃんの持っとるそれ、装備専用アイテムとちゃうか?」



 武器屋のおっちゃんはアイテムBOXの中を見透かせんのか。



 ……と驚きながら、オレは"牛魔王の角"を取り出した。


 いや、ここでこの台詞が来るってことは。


「まさか、おっちゃんこれ加工できるんですか?」


「おう。あたぼうよ!実はワシ昔鍛冶屋しとったんや。兄ちゃんには礼として特別ワシがええ武器に鍛えたるわ。ちょっと4時間くらい時間ちょうだいや。今日は店の方は仕舞いや。」


 まさかこんなに早く武器に加工してもらえるとは。

 ありがとう、おっちゃん。


 オレはおっちゃんに"牛魔王の角"を渡し、ついでに"アイアンソード"も3本追加で買っておいた。


「4時間か。今13時だし時間はまだあるな。」


 18時からまたパーティーの約束をしているので、それまでに出来ることをしておくことにした。


 しかし、武器屋から少し歩いた場所で、まさかの衛兵らしきNPCに呼び止められてしまった。



「ここにおりましたか、英雄様。実はですね我らが主、カルディアの領主様がお呼びでございます。どうか付いていただけますか?」


 カルディアに領主なんていたのか?


 まずはそこから驚きだったが、そもそも領主や貴族、王といった高貴なNPCと面会できるイベントは以前にはなかった。


 もし、冒険者が高貴なNPCに手をかけてしまえば、NPC社会が大変なことになってしまうからだ。


 何が起こるか分からなかったが、せっかくのレアなイベントであったため、オレはカルディアの領主に会うことを了承した。

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