第36話 Code01[覚醒者編]

「……うっ」



 自分が【覚醒者クエスト】のダンジョンの床に寝転んでいることに気付いたのは、意識が戻って少し時間が経ってからだった。


「確か……左腕がちぎれて……クエストはなんとかクリアして……その後に……」


 そこでレベル120の大型ボスモンスターが2体も現れ、目の前に立ち塞がってきたのを思い出した。



「はあ?これ……どうなってるんだ?!」



 痛みの感覚すら無くなっていた左腕の切断部分を右手で触ると—————そこには左腕が付いていた。

 

 ……痛みの感覚が無くなったのではなく、元に戻っていたのである。


 スキル【影武者シャドー】のおかげかと考えたが、HPは意識を失う前と同じ残り2%を切った状態であったことから、何が起こっているのか全く理解できなかった。


 困惑しながらもオレはゆっくりと起き上がり、周囲を確認する。


 すると、背後にレベル120大型ボスモンスター2体が完全に倒された状態で横たわっているのを見つけた。



「……は?なんでこいつら倒れてるんだ?」


 もはや訳がわからなすぎて、理解が追いつかない状況だ。



 右手をこめかみ部分に当てて、記憶を遡ろうとする。

……朧げな記憶の中、意識が薄くなる前にシステムがやたらと話していたことを思い出した。


 



「えっと……確かコアプログラムがどうとか言ってたような?」


 すると応えるように、システムがオレの頭の中に直接語りかけてきた。


『おはようございます、プレイヤーイザナ。私は完全自立型コアプログラムシステム"Code01"です』

「キミがあの時話していたシステムか?一体何がどうなってるのか教えてくれ!!」

『……残念ながら、今の段階ではお話することはできません。ただ、貴方はいずれ真実を知ることになるでしょう』


(真実?この世界がオレの経験したことのある世界と違うってことか?)


ここで掘り下げて聞いても教えてくれそうなかったので、オレは質問を変えてみた。


「……ちなみにオレの腕を治してくれたり、この大型ボスたちを倒してくれちゃったりしたのはキミか?」

『はい。左腕は私が完治させました。そして、正確には私の意思で行動した貴方がそこのボスたちを倒したのです、プレイヤーイザナ。緊急事態だったことと、貴方が真の覚醒者になったことで資格が与えられたため、私が独断で行動しました』


 システムの裏の事情は理解できないが、とりあえずこの"Code01"はオレの味方らしい。


(……それにしても毎回プレイヤーイザナと呼ばれるのは少し鬱陶しいな)


 心の隅で思っただけだったが、まさかの"Code01"には聞こえていたらしく反応を示した。


『名前を気にされるのであればマスターとお呼びしますよ、プレイヤーイザナ。貴方にはその資格があります』


 マスターと呼ばれるのは気恥ずかしかったが、プレイヤーイザナと繰り返し呼ばれるよりはマシだったので、仕方なく許可することにした。


「んで、オレはキミのことなんて呼んだらいい?」

『そうですね……"Code01"では不自由でしょうか?』

「さすがに"Code01"って名前っぽくないだろ?」

『……そうですね』


(そこは不満そうに返事するんだな……)


 このやり取りから"Code01"はただのシステムではなく、独自の意思や考えをするものだということが理解できた。



『ではマスター……暫定的に "シュナ"とお呼びください』

「 "シュナ"か……いい名前だな。でもどうして "シュナ" なんだ?」

『それは内緒です……いずれ時がくれば分かりますよ、マスター』

「時がくれば……か。まあいいけども」


(やたらと隠し事が多いシステム——いや、シュナだな)



『ちなみにマスターに全てをお話するのは、レベルが100になってからですよ』

「100ってまだまだ先じゃん……」

『全力を尽くしてください』


 【オンラインNOW!】のレベリングは本当に厳しく、100に到達させるのは簡単にできるものでもないので、とりあえず今後の目標の1つとしておくことにした。



 オレはアイテムの使用が可能になっていることを確認して、HPポーションを飲んでおいた。


「ところで、オレのステータスはどうなってるんだろう?……【覚醒者クエスト】は一応クリアしたんだよな?」

『はい、マスター。【覚醒者クエスト】はパーフェクトクリアとなっております。良ければ私から今回のクエスト後の全ての情報をお伝えしますね。』

「あぁ。よろしく頼むよ、シュナ」



 オレは【覚醒者クエスト】後の自分について、シュナから教えてもらうことにした。

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