第14話 牛魔王の黒剣[第1階層編]

 カルディアの領主・リーシャとの面会を終えたオレは、再び武器屋に戻ってきていた。


 かなり長い時間を過ごしていたため、武器はすでに出来上がっているだろう。


「お!兄ちゃん、遅かったな!ワシの最高傑作が出来よったわ。」


 棚の上には丁寧に磨かれた、見事な黒色の直剣が置かれていた。


「これが“牛魔の帝王"の角から出来た剣……?」


「その通りや。名称は《牛魔王の黒剣》。今日から兄ちゃんの相棒になる剣や。」




 ○牛魔王の黒剣(D)【所持数:1】

 →見た目は黒いがかなり頑丈。軽くて振りやすい。装備時ATK(物理攻撃力)+300。


 ☆牛魔王の雄叫び《装備専用スキル》

 →追加効果。装備時自動発動する。30秒間追加でATK(物理攻撃力)+200。(効果が切れてから30秒後に再度自動発動)




 ……おお。めちゃくちゃいいじゃん、これ。



「これは本当に良い性能の剣ですね。ほんとにありがとう、おっちゃん!」



「礼なんかええで。また何かあったらうちに寄ってや!」


 時刻が17時55分になっていたので、オレはおっちゃんへ挨拶を済ませ、慌ててみんなの元へ向かった。



 ♢




「あ!やっと来たわ。」


「イザナくん、遅いよ〜。」


 実際のところ遅刻はしていなかったが、ほむらとかなでに遅い遅いと言われてしまった。



 タケルとルイを含めた4人は5分前には集まったらしく、何やら話が盛り上がっていたようだ。


「ん?何かあったの?」


 タイミングを見計らい、オレは会話に入ってみる。


「イザナくんは聞いてないんっすか?!カルディアの英雄の話っすよ!」


「へ、へえ。な、なにそれ?」


 ここのメンバーにまで知れ渡っていることに、内心かなり動揺していたが、顔では平静を装った。


 完全に口では動揺してしまっているが……。



「街のNPCたちもみんなして、話しながらお祭り騒ぎだったよね。」


「ぜーったいカルディアの英雄はβテスターの誰かだと思うのよね。ぜーったい!」


 ルイ、かなで、ほむらの3人のやり取りをタケルだけはやれやれといった風に見守っていた。


「でもほんと、びっくりだよな。俺たちがログアウトしている間に、ものすごく大きなことを成し遂げて英雄なんて。しかもその正体が誰なのか全く分からないってのも不思議だよな。」


 ん?正体?

 いや実はね、オレなんですよ?



 ……なーんて、言えるはずもなかった。


 仮にもし言ったとしてもβテスターでもないのにって、冗談にしか聞こえないだろう。





 その後みんなでフィールドへと出かけ、またひたすら"角兎"クエストを繰り返した。


 だがレベルが5を超えた辺りから、正直1階層でレベリングするにはかなりキツいものがあった。


 数時間狩り続けたのちようやく、レベルは1つ上がるか上がらないかだった。


「うーん。暫くはカルディアの街の中にあるクエストをこなしながら、少しずつ経験値を集めた方が良さそうだな。」


 タケルがみんなに提案してくる。


「この調子だと、第1階層のエリアボスが実装されるまでは、ちょっと暇っすね。」



 ……第1階層エリアボス。


これを倒せば、第2階層へのワープが可能になる。

もちろん簡単に倒せるようにはできていないため、実装にはまだまだ時間がかかるだろうと踏んでいた。



 だが、くだんのエリアボスが4日後には実装されることを、この時のオレたちは知らなかった。






【パーティメンバー詳細】


 ○タケル:レベル6【騎士】


 ○ルイ:レベル6【狩人】


 ○ほむら:レベル6【魔法師見習い】


 ○かなで:レベル6【回復師見習い】


 ○イザナ:レベル7【狩人】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る