第13話 カルディアの領主[第1階層編]
衛兵たちに連れられたオレは、本来ならプレイヤーは一切立ち入ることができないエリアである、『領主の屋敷』に招かれた。
「少し古いけど、すっごい立派な作りになってるな。」
「現領主様は3代目でいらっしゃいまして、このお屋敷は初代領主様が建築なされたのです。」
……3代目!
衛兵から教えられた情報に驚かされた。
しばらく歩き続けると、一段と大きな扉の前にたどり着いた。
「ここから先は領主様が待っておられる部屋になります。どうぞお入りください。」
衛兵たちが扉を開くと奥の方で、椅子の前に立っている1人の女性の姿があった。
長い金髪を後ろで1つに結び、洋服であったが造りが騎士風で長いスカートの格好をした凛々しい見た目の女性だった。
エメラルドグリーンの眼は、本物の宝石かのように輝いて見え美しかった。
「私が《城塞都市カルディア》の3代目領主、リーシャ・ワン・カルディア3世だ。まずはカルディアを救ってくれた英雄である冒険者の貴殿に感謝を。」
自己紹介を終えたリーシャは深々とお辞儀をした。
周囲にいた衛兵たちもこれに習い、一斉に深々とお辞儀をする。
「いや、やめてくださいよ。オレは別にそんな大層なことはしてないですし。」
「貴殿は謙遜するタイプなのだな。それでも救われたことは事実だ。カルディアの民を代表して礼を言わせてくれ。」
内心恥ずかしかったが、正直なところこんな美人にここまで言われて、悪い気はしなかった。
「分かった、分かりましたよ。感謝ありがたく頂戴します。」
「うん、よかった。」
それまで凛々しさを保っていたリーシャは、少しだけニコっとした笑顔を見せてくれた。
「今後我々カルディアの民は、常に貴殿に友好的であることを誓おう。何かあれば遠慮なく言ってくれて構わない。」
「それはありがたいですね。」
NPCとは言え、今後更に隠し要素は見つかるかもしれないのでこういう細かい積み重ねは大事だと思った。
「そうだ!貴殿に渡しておきたいものがある。」
リーシャはそう言うと懐に手を忍ばせ、中から巻物のようなものを取り出した。
「これは役に立つかは分からないが、冒険者である貴殿になら何か使い道があるかもしれん。」
「これはこれは、実に古臭い……いや歴史ある巻物ですね。ありがたく頂戴します。」
リーシャから巻物を受け取ると、巻物の色が紅色に染まり、アイテムが明らかに変化したのを感じた。
「まさかこれって……。」
すぐにアイテム名を確認してみる。
○紅の
→第2階層にて【緊急クエスト】を受注することができる。
おお、まじかよ!
これさえあれば、また第2階層で【緊急クエスト】に挑むことができるのか。
思いがけない収穫に頬がつい緩んでしまった。
「ふふ。何やら喜んでもらえたみたいでよかった。また良い掘り出し物があれば貴殿に贈り物をするとしよう。」
「それは嬉しいですね。ありがとうございます、領主様。」
「リーシャでよい。もう貴殿と私は友人に近い関係だと思っているからな。」
「あはは……。ありがとうリーシャさん。」
「そうだ、もしよかったら貴殿の英雄譚を聞かせてはくれないか?」
……いやいや英雄譚って。
ほんとただモンスター倒しただけなのにな。
オレは重い口を開き、あの日の出来事について話し聞かせることにした。
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