第11話 緊急クエストⅡ[第1階層編]
"牛魔の妃姫"の討伐報酬であるステータスポイント+300は、どこを探してみても追加される気配はなかった。
どうして追加されていないのか色々考えた末、オレはあることに気付いた。
「そう言えば、さっきの"牛魔の妃姫"を倒した後、クエストクリアの表示が出なかったよな?」
その答えに辿り着いた直後、背後から急な悪寒に襲われたオレは、咄嗟に持っていた"アイアンソード"で防御態勢を取った。
これが出来たのは、それこそ長年のVR MMOプレイヤーとしての直感という名の賜物だろう。
背後からの急な攻撃に対し、防御態勢をとったことで直撃は避けられたが、たった一撃で防御に使用した"アイアンソード"は粉々に砕け、その反動でオレの体は大きく前方に吹き飛ばされてしまった。
「……ぐっ!……がはっ。」
突然の出来事に敵の正体も確認できず、オレは無惨に壁に激突した。
激突した分のダメージも加算され、残りHPは10%を切ってしまい、危険信号を示す表示がなされ、目の前に映る情景が赤色に染まった。
「なん……なんだよ。くそっ……!」
敵の正体を確認しようと顔を上げると、更に新しい赤字のポップが表示された。
【緊急クエストⅡ】《第1階層専用》
○愛しき妻を奪われた憎しみは大きく、魔神の玉とその怒りが呼応してしまった。帝王を倒し城塞都市カルディアを護れ。
難易度:★★★★★(C)
詳細:牛魔の帝王(0/1)
報酬:獲得ステータスポイント+700。
《牛魔王の角》(装備専用アイテム)
※注意:獲得経験値0。激しい怒り状態のため"牛魔の帝王"のレベルと全パラメーターが2倍になります。
○牛魔の帝王(レベル30)
「これ、何かの冗談だよな?」
……レベル30?!
そして先程の"牛魔の妃姫"以上に赤というより深紅に染まった名前が、その圧倒的な力の差を物語っていた。
"牛魔の帝王"は、ほぼ死にかけのオレの姿を見て、まるで勝利を確信しているかのようにニヤけた表情を見せていた。
HPは残り10%を切り瀕死状態。
さらに武器は粉々に砕け、他の装備に切り替えている余裕すらない。
いや、実際は手持ちの中で最強の"アイアンソード"ですら一撃で砕かれたので、他の装備をしても意味がないというのが正しいだろう。
ぐったりした状態で座ったままでいると"牛魔の帝王"は挑発するかのように、人差し指をチョイチョイと動かした。
まるでかかってこいよ……と言わんばかりに。
「はぁー。さすがに調子乗りすぎでしょ。ただの不意打ちで吹き飛ばしたくらいで。」
オレはゆっくり立ち上がる。
"牛魔の帝王"からすればその姿はまるで、弱者が必死に最後の悪足掻きをしようとしているように映っているのだろう。
挑発に乗ってきた姿をさぞ滑稽に笑うかのように、先程以上にニヤけた顔を浮かべ、高々に唸り声を上げた。
グァァァァァァァァァ!
「瀕死だから?武器が装備できないから?……そんなもん関係ねーんだよ。」
オレは深く息を吸うと、ハッキリとその言葉を口にした。
「《マナコントロール》発動。」
全MATK(魔法攻撃力)をATK(物理攻撃力)に変換し、右手に力を込める。
一気に周囲の空気が変わったのを、自分でも感じた。
急激な変化を見せた姿に動揺しているのか、先程まで余裕の表情であった"牛魔の帝王"は明らかに焦っていた。
「今更後悔しても、もう遅いっての。先に挑発してきたのはオマエだからな。ただ倒すだけじゃ済まさねーよ。」
オレは一気に距離を詰める。
破壊的までに強力な力を纏ったその拳は、圧倒され反応すら全く出来ないでいる"牛魔の帝王"の顔面に直撃した。
すかさずオレはスキル《ダブルアタック》を発動させ、その効果で2連撃分のダメージが加算される。
明らかなオーバーダメージに"牛魔の帝王"は表情を変えることすら許されず、一瞬で消滅した。
ーQuest Clear!!
ーステータスポイント+1000獲得しました。
ー《牛魔王の角》を入手しました。
ーオーバーキルボーナスにより、ユニークスキル
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