第8話 初パーティー[第1階層編]
《第1階層:城塞都市カルディア》
——フィールドエリア
ここは辺り一面草原と、複数存在する小さな洞窟で構成されている。
空の設定は常に晴れの状態なので、朝日や夕日そして星空がかなり綺麗に見える場所なのだ。
「まずはクエストだよな?」
タケルがリーダーとして率先して話を進める。
「βテストの時の情報はバッチリ調べてるんで、僕わかるっす!こっちっすよ!」
ルイはそう言うと、自信ありげにみんなを案内し始めた。
βテスト……正式版の【オンラインNOW!】が発売されるまでに、きちんとシステムが稼働するのかどうかを確認するための事前準備。抽選300人限定に配信され、言わば【オンラインNOW!】の予行練習みたいなものだ。
βテストに参加したメンバーはβテスターと呼ばれ、貴重な情報を入手しているため正式版からのプレイヤーたちからは神聖視されていた。
ちなみにオレはβテスターではない。
ただ、タケルやルイが話しているクエストについては、当然オレも知っている。
「いたっす!みんなこのNPCの女の人に話しかけてくださいっす!」
ルイの呼びかけに、早速みんなで話しかけてみる。
「あぁ、困りました。私はリンゴを取りに行きたいのに、草原にはたくさんの"
と、NPCの少女が話し終わると、
"ピコンッ!"
とクエスト内容が表示された。
○【赤い実は本当にリンゴ?】
難易度:★(E)
詳細:角兎の討伐(0/20)
報酬:取得経験値+100
……ん?このクエストってこんな名前だったっけ?
少し気になったが、他のみんなは全く気にも止めていない様子だった。
「このクエストを受けながら"角兎"を倒すと効率良く経験値を稼げるんっす!」
「そうなんですね。このクエスト自体は簡単そうに見えますけど、大丈夫です……よね?」
かなでが慎重になるのも確かに分かる。
正式サービスが開始されてから、いきなり強制ログアウトになったり、取得経験値が減ってしまうのは誰もが避けたいだろう。
「これは俺もβテスターたちのネットの掲示板で見たから、大丈夫だと思うよ」
「そうなんですね。じゃあ安心ですね」
タケルも見たことがあると言ったことで、かなでは納得した様子だった。
だが、オレは我慢できずここで横槍をいれた。
「いや、もう一工夫すればもっと取得経験値の効率を上げれますよ。」
4人とも驚いたように、オレの方に振り向く。
「イザナくん……まさかβテスターっすか?」
ここで納得させるためにそうだと言っても良かったのだが、最初のパーティーメンバーに嘘をつきたくなかったオレは正直に "違う" と答えた。
「じゃあβテスターでもないのに、どうしてそんなことが分かるんっすか?」
ルイの言いたいことは分かるが、今は自分の身に起こったことを話せる程仲良くはなれていないと思っていた。
「それは……今は話せません。ただ、信じて欲しいです。お願いします。」
厳密に言うと信用してもらえるかどうかより、自分のレベリングの効率にも関わってくることなので、ここはなりふり構っていられなかった。
「あの、イザナくんのこと信用しませんか?」
ここでかなでが助け船を出してくれることには驚いた。
「そうだな。こんな時はパーティーメンバーを疑うよりも信じるべきだろうな。イザナくんの話を聞こう」
「うっ……パーティーリーダーのタケルくんがそう言うなら、分かったっす」
「私も納得はしないですけど、かなでちゃんがそう言うなら分かったわ」
うん。まあ、とりあえず聞いてくれるみたいだ。
全員聞く準備ができたところで、オレはみんなへと向けて口を開く。
「実はですね……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます