ルイ編
第38話 苦悩[ルイ編]
——これは最前線が第6階層へと到達した頃の、僕(ルイ)の物語っす。
♢
「最前線は……ついに6階層っすか……」
僕はタケルくんたちと別れてから、ギルド【龍ノ牙】を立ち上げ、ギルドマスターになった。
メンバーも3人加入してくれたが、それ以上増えることはなかったのだ。
「ギルドメンバーってどうやったら増えるんっすかね……」
僕がそんな風に悩んでいると、メンバーの1人が返事をしてきた。
「そりゃギルマスが未だにただの【
「だって、僕は【
「……ちっ。やれやれ、これだから俺らのギルドはだめなんだよ、威厳がかけらも感じれねえし!……いこうぜ!!」
ギルドメンバーの1人はそう言うと、他のメンバーとどこかに行ってしまった。
僕はどうしても【
「ギルドのメンバーにも愛想尽かされちゃった……っすかね」
正直なところ、どうすればギルドを……メンバーであるみんなをまとめることができるのか、悩んでいた。
「【
僕は自分に言い聞かせるように話した。
攻略サイトを調べても出てこず【オンラインNOW!】の公式サイトに掲載されている職業一覧のところでしか【
「はぁ……ほむらちゃんやかなでちゃんは元気にしてるっすかね〜」
気づけば夜8時を過ぎ、第5階層[海上都市シークォーツ]の噴水広場の周辺も人通りが少なくなってきていた。そんな中で、僕の後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
「ほむらやかなでが、どうしたって?」
僕が振り向くと、そこにはイザナくんが立っていた。
(……げっ!イザナくんだ……僕、正直なところイザナくんのこと苦手なんっすよね)
「久しぶりだな、ルイ」
そう言って手を振るイザナくんに対し "ははっ……" とひきつった笑顔で返しておいた。
どうしてイザナくんのことが苦手かと言うと、実は第1階層でパーティーを組んで間もない頃、僕は当初一目惚れしたかなでちゃんに告白したのだ。
でもかなでちゃんの答えは——他に気になる人がいるからごめん……というものだった。
絶対にイケると思っていたのに振られてしまい、しかもその相手がイザナくんと知った時は、少し殺意が湧いた。
更に僕が身を挺してほむらちゃんのことを護った第2階層の事件……通称"略奪のサド"事件の際も、HP全損してペナルティを負っている間に、イザナくんが全てを1人で片付けていた。きっとその姿にほむらちゃんも好意を持つことになったに違いない。
……つまり——かなでちゃんだけでなく、ほむらちゃんまでたぶらかす最低な野郎なのだ。
[僕がかっこよく活躍するところをことごとく奪いながら、色んな女の子に色目を使う最低な男]
……これが僕がイザナくんに対して抱いている気持ちだった。
(……いや、でもこれはチャンスじゃないっすかね。イザナくんなら【
僕は恐る恐る、イザナくんに尋ねてみた。
「え?【
(まじっすか!きたっす!きたっすよこれ!!……ここで情報をうまく聞き出して【
イザナくんはちょろいし、きっと元パーティーメンバーのよしみで、簡単に教えてくれるに違いないと確信していた。
「教えてもらえたり……しないっすかね〜?」
僕は嘆願するかのような顔でイザナくんにお願いしてみた。
「構わないけど。ただ【
「へ……?」
一瞬何を言われたのか分からなくて、素っ頓狂な声が出てしまった。
「第15階層?!……そんなん待ってられないっすよ。そんなことしてたらギルドが……」
そこまで言って、僕は口を瞑った。
(……やばいっす。イザナくんにギルドがうまくいってないのバレるところっす)
「ギルド?……あぁ、自分で創るって言ってたもんな。ルイはギルドマスターになったんだな」
「そうっすよ!ギルドマスターっすよ?すごいっしょ?」
僕は自慢げに、かつ少し嫌味ったらしくアピールして見せた。
「あぁ。ギルドマスターはすごいよな。オレにはできないだろうから尊敬するよ」
「へ、へへん!そうっしょ!」
(……尊敬?口ばっかりなこと言いやがるっすね)
イザナくんの偽善者っぽい対応にイライラする。
それと同時に15階層からでないと転職は難しいという事実に落胆してしまった。
そんな僕の姿を他所に、イザナくんは何やらブツブツと恐らくVC(ボイスチャット)で誰かと話しをして、僕の方に向き直った。
「まぁ、そう落ち込まなくても……実はあるみたいなんだよ」
「……あるみたいって、何がっすか?」
「今の時点で【
「ま、まじっすか!!!」
「まじだよ」
(きたっすきたっすよ!!!これで僕は【
「早く情報教えるっす!!」
「えっと正規ルートは第15階層で転職クエストを受ける方法なんだけど、裏ルートがあって……」
「うんうん!」
「第6階層に稀に現れる隠れボス[
(……は?隠れボス?ふざけてるんっすか?)
隠れボスは希少な存在かつものすごく強力な存在として知られている。
その中でも[
「[
僕は憤り、握りしめた拳を座っていた噴水の淵に打ちつけた。
……痛みと虚しさがじんじんと広がっていく。
「……1人でダメだと思うなら、オレとパーティーを組んで挑めばいい」
「は?なんでイザナくんがそこまでしてくれるんっすか?」
[
でもだからこそ、そんな危険なことにあえて首をつっこんでくることが理解できなかった。
「なぜって……そりゃ———友達だから」
イザナくんは僕の目を真っ直ぐみながら、そう答えた。
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