第14話
陛下の決定に全員が驚いた顔をする。
ハリー殿下は顔を青褪めさせて信じられない様子だ。まさか自分が王太子の座を追われるだけでなく数年以内に王族で居られなくなると思わなかったのだろう。
「もっと前にこうするべきだったのだ。自分の息子に国を継いで欲しい。その願いだけでお前を王太子にしていた。いつかは努力をしてくれる。そう願っていたのに私の期待を裏切り失望させた。お前の事はもう息子とは思わぬ」
王様と王妃様の間に生まれた男児はハリー殿下のみ。五歳上の王女殿下がいらっしゃいましたがもう既に他国の王族に嫁いでおり、その国で王妃となられています。
よってハリー殿下が王太子の座を引き受けてきました。王様もこのままでは良くないと思ったでしょう。
「そ、そんな…!じゃあ、誰が国を継ぐというのですか!僕以外、継げる者はいないでしょう!」
何を言ってるのですか。
王族が王位を継ぐべき。それは確かな話ですが王族以外にも継承権を持つ者は当然います。
それすら知らないのでしょうか。
「お前の他にも継承権を持つ者はいるに決まっておるだろ!」
「そんな…」
絶望したような表情を浮かべるハリー殿下ですが助ける者も同情する者も誰もいません。
元々、努力せず遊びたい放題の彼を王族として認める者はほとんどいませんでしたから。今回の騒ぎを見て、さらに失望したのでしょう。
「……な、なら、せめてアイリスと結婚させてください!そうすれば公爵になれます!それで我慢します!」
まだ悪足掻きを続けるつもりですか。
しかも公爵で我慢しますって烏滸がましいにも程がありますよ。
そもそもシーモア公爵家の後継は兄です。私と結婚したところで公爵家は継げません。もちろん結婚する気もありませんけど。
ハリー殿下の意味不明な言葉に怒ったのはずっと黙っていた王妃様でした。
「もういい加減にしなさい!」
「は、母上…」
「アイリスちゃんを私の娘に出来なかったのは貴方のせいなのよ!貴方が馬鹿で阿保で愚か者だったせいでアイリスは離れて行っちゃったの!いい加減、現実を見なさい!」
色々と言われていますが、一番気になったのはハリー殿下に対する罵詈雑言ですね。
思わず笑ってしまいそうになってしまったのは私の性格が悪いせいでしょう。
「そんな違う!違います!アイリスは僕を好きなはずです!ずっと僕の為に頑張ってきてくれたんだ!」
頑張ってる事を知っているなら協力してほしかったですよ。
今更言っても無駄な話ですけど。
「そうだよね!アイリス!」
「あり得ませんわ。私が頑張ったのは未来の王を支える為、延いては国の為です。努力もしない貴方の為に頑張った覚えはありません。勘違いしないでください」
ばっさりと言い切ればハリー殿下は膝から崩れ落ちた。
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