第16話
マイラの言葉により、周囲は一斉にざわつき始める。
どういう事だ?
どうなっている?
あの娘とハリー殿下は両想いなのではないか?
まさかハリー殿下は騙されたのか?
多くの疑問と予測が飛び交う。
そういう私もカイの顔を見てしまった。
「どうなっているんだ…」
「私にも分からないわ…」
小さく呟かれた言葉に頷いた。
全く理解出来ない。だって彼女はハリー殿下と仲良さそうに過ごしていたではないか。
まさか王太子狙いだった?だから王太子でなくなった彼に興味がなくなったのでしょうか?
悪い考えがぐるぐると頭の中を駆け巡る。
すると陛下の一言が響き渡った。
「静まれ!」
全員の口がぴたりと止まる。
そして一斉に視線をマイラに向けた。
どの視線も決して良いものではなく彼女もかなり居心地が悪そうです。
「マイラ嬢、どういう事か説明してもらえるかな?」
「は、はい…!」
声をかけられたマイラは背筋を伸ばして真っ直ぐ陛下を見つめた。
「確かに私は殿下と仲良くさせて頂きました。でも、仲良くしていたのは殿下に命令されたからです…」
命令?ハリー殿下が?
這い蹲る本人を見ると顔を青褪めさせていた。
マイラの言葉に嘘はないのだろう。
「殿下との出会いは学園の中庭でした。不注意で転んでしまった私を助けて下さったのが殿下です。その際、殿下に『君となら仲良くしてやっても良い』と言われたのがきっかけで話すようになりました」
偉そうな言い方ですね。
仲良くしたいのなら他の言い方をすればいいのに。どうせ思い付かなかったのでしょうけど。
「ち、違う!そんな事は言ってない!」
焦ったように声を出すハリー殿下ですがそれを信じられる者はいません。
そもそも本当に何もないなら焦る必要はありませんから。
「ハリー、黙っていろ!今は彼女の話を聞いておるのだ!」
「ですが、父上!」
「全てを聞いた上で判断する!黙りなさい!」
陛下に強く叱られたハリー殿下は青褪めた顔を床に向けて「違うのに…」と小さな声で繰り返し呟きます。
見ていてちょっと哀れになる姿から目を逸らし、マイラの顔を見る。
「すまなかった、マイラ嬢」
「い、いえ…。こちらこそ混乱させるような事を言ってしまい申し訳ございません…」
「うむ。では、話を続けてくれ」
「は、はい…!」
ハリー殿下の想い人ということで近寄らずにいましたけど礼儀が悪いという訳じゃなさそうです。
勝手に態度が悪いイメージを付けてしまっていたのは申し訳ないですね。
「それではお話を続けさせていただきます…」
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