番外編3※アイリス視点
ハリー殿下が辺境の地に送られてからは王都が混乱に包まれていた。
次期王太子はどうなるのか。
そればかりが話題となっていたのだ。
「ねぇ、断って本当に良かったの?」
「僕に王太子は似合わないよ」
次期王太子の第一候補として名前が挙げられたのは私の婚約者であるカイ・ハーバートだった。
王家の血を引き、優秀な文官であり、さらに元々王太子妃の教育を受けていた私が婚約者である彼に陛下がお願いをしたそうだ。
『私には王の位に就く素質はありません。申し訳ございませんが辞退させて頂きます』
そう言って断ったそうだ。
元々彼の保持していた王位継承権は第七位と低め。
他の継承権を持つ者に譲って欲しいと頭を下げてお願いしたらしい。ハリー殿下の件で迷惑が掛かってしまったからか陛下は無理強いする事なく諦めてくれた。
「だって王太子になるって事は次期国王になるって事だよ?面倒じゃない?」
「面倒って…」
確かに国王、国の父になるという事は簡単な事じゃない。
絶大な権力を持つと同時に国を守らなければいけないのだから。生半可な気持ちで挑めば国と身を滅ぼす結果となるだろう。
「それに国王は国に住まう民全員を愛さなければいけない。僕には無理な事だよ。僕が愛しているのはアイリスだけなのだから」
恥ずかしい台詞をさらっと言わないでほしい。
にこにこと楽しそうに笑う彼の頬を抓った。
「アイリスは?」
「私?」
「やっぱり王妃になりたかった?」
何を馬鹿な事を言ってるのだろうか。
「まさか。カイが国王になるなら私も王妃になりたいと思うけど貴方が望まないなら私も望まないわ」
私はただ好きな人と、カイと共にいられたらそれだけで良いのだ。
嬉しそうに目を細めた彼の手が私の手に重なる。
ゆっくりと近づいて口づけを交わした。
「僕、かなり想われているみたいだね。自惚れてもいい?」
「何度も好きだって伝えてると思うのだけど」
「はは、そうだね。僕も同じ気持ちだ」
「知ってるわ」
婚約者になってからカイは甘過ぎる。
特にハリー殿下の件が終わってからの彼の甘やかしっぷりは他人には見せられないほどだ。
「ねぇ、アイリス」
「なに?」
「子供は何人欲しい?」
「は?」
唐突な質問に驚く。
「子供達にはどんな職に就いてほしい?老後はどこに行きたい?二人で旅をするなんて最高じゃない?」
矢継ぎ早に続く言葉に戸惑いを隠せずにいるとくすりと笑われた。
「ねぇ、アイリス。僕達の未来の話をしようよ」
にっこりと微笑まれた。
あぁ、なるほど。そういう事なのね。
納得した私は彼と同じ表情をする。
「もちろん喜んで」
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