番外編4※アイリス視点
「え?好きな人が出来た?」
学園の昼休み、友人マイラと昼食を摂っていると相談されたのは好きな人が出来たという事だった。
思わず大きな声で返せばマイラは焦った様子を見せる。
「わわっ!ちょっと声が大きいです!」
慌てたように私の口を塞いだマイラは「申し訳ございません」とすぐに解放してくれる。
そもそもこっちが大きな声を出したのが悪いのだから謝る必要はないのに。
「こちらこそ大声を出してしまってごめんなさい」
「い、いえ…。大丈夫です」
「それで好きな人が出来たというのは本当なのですか?」
今度は小声で尋ねてみるとマイラは恥ずかしそうに顔を赤らめて頷いた。
ああ、可愛いですわね。
恋する乙女といった雰囲気のマイラは可愛い。
「本当です」
「お相手の名前を聞いても良いかしら?」
友人の初めての恋。
出来る事なら応援してあげたいのだ。
「は、はい。名前はイーサン・アダム様です」
イーサン・アダム。
確かアダム子爵家のご子息ですね。
剣の腕を見込まれて卒業後は騎士団に入団する予定だと聞いています。
無口で落ち着いた性格の方でしたね。
「どこで知り合ったのですか?」
「例のパーティーの時です。その、暴れたハリー殿下から私を庇ってくれた方を覚えていらっしゃいますか?」
そういえば、あの中にアダム子爵令息が居ましたね。
「パーティーが再開した後、その、ダンスに誘っていただいて…」
「それで意識し始めたのですか?」
「は、はい…」
真っ赤になった顔を手で覆い隠すマイラはやっぱり可愛いですわね。
「それからよく話すようになって…最近になって彼が好きだと自覚しました」
パーティーの日から一ヶ月も経っている。
好きだと自覚するには十分だったのだろう。
「で、でも…やっぱり無謀ですよね」
「どうして?」
「イーサン様は貴族です。私とは住む世界が違い過ぎますから」
悲しそうに紅茶の水面を見つめるマイラ。
確かに平民と貴族の結婚は難しいが決して出来ないわけではない。
貴族位が低ければ低いほど平民との距離は近づきますからね。
「私はマイラの事を応援しますわ」
「でも、私は平民ですよ?難しくないですか?」
「公爵令嬢の友人でもありますわ」
いざとなったら権力を使えば何とかなりますよ。
にっこりと微笑めばマイラは瞳に涙をいっぱいに溜める。
「本当に応援してもらっても良いのですか?」
「ええ、もちろん。大切な友人の初恋ですから」
「ありがとうございます…!」
抱き着いてくるマイラの背中をそっと撫でてあげる。
さて、まずはアダム子爵令息の気持ちを確認するところから入るとしましょうか。
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