番外編5※アイリス視点
調査の結果マイラの想い人であるアダム子爵令息には婚約者が居ない事が分かった。
また婚約者候補も居ない。
縁談の申し出があった事もあるそうだけど本人は剣一筋な生真面目な性格で相手のご令嬢がお気に召さなかったそうだ。
どうにかして二人の関係を進めたいところだけど公爵令嬢である私がアダム子爵令息にマイラとの結婚を勧めれば脅しと受け止められてしまうだろう。
無理やりの結婚では二人は幸せになれない。
それはマイラ本人が望まないはずだ。
「マイラの為にもアダム子爵令息と話したいのだけど一回も話した事がないのよね」
いきなり声をかけられても彼を戸惑わせてしまうだけだ。
マイラの許可をとってから婚約者であるカイに相談してみたけど苦笑いを向けられてしまう。
「悩んでいるみたいだね。良かったら僕が代わりに話してこようか?」
「カイに声をかけられても彼が困ってしまうでしょ」
既に学園を卒業している侯爵家の人間に声をかけられてもアダム子爵令息は困るはず。
どうして声をかけられているのか分からないだろうし、気遣いは嬉しいが今回は遠慮しておこう。
「じゃあ、イーサン君のお兄さんに話を聞くって言うのはどうかな?」
「知り合いなの?」
「同級生だったし、職場も同じ。彼について色々と聞けると思うよ」
それは良い提案だと思う。
笑顔で「お願いしても良い?」と尋ねるとカイは朗らかに笑って頷いた。
「あっ、でも、マイラの名前は出さないでね?」
「分かっているよ」
頰を撫でられたかと思った何故か軽く摘まれてしまう。
痛くはないので戯れられているだけに感じるがどうかしたのだろうか?
首を傾げると拗ねたような表情を向けられる。
「最近のアイリスはマイラ嬢の事ばかりだね。少し妬けてしまうよ」
「妬くってマイラは女の子よ?」
「相手が女の子であろうと嫉妬はするものだよ」
同性が相手でも嫉妬するものなのだろうかと疑問に思う。しかしよく考えてみればカイが自分よりも友人ばかりを優先していたら確かに妬いてしまうかもしれない。
「ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったの…」
「分かっているよ。むしろ女の子にも嫉妬してしまう狭量な男でごめんね」
「ううん、カイは悪くないわ」
それに相手な誰であろうと嫉妬して貰えるのは嬉しい。カイが私を好きなのだと分かるからだ。
そう思ってしまう私は性格の悪い女なのだろう。
「マイラ嬢の話は一旦おしまい。僕に構ってくれる?」
「ええ、勿論よ」
拗ねた婚約者の頭を撫でた。
よく考えたら婚約者に執着する必要ないですね? 高萩 @Takahagi_076
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