第11話
国王陛下と王妃様の入場により会場内の空気が一気に変わる。
ハリー殿下もそれに気が付いたようで勝ち誇った表情を私とカイに向けてきた。
彼が何をするのか予想出来ますけど、やめておいた方が良いと思うのです。止めませんけど。
「父上、母上!」
立ち上がったハリー殿下の大声に陛下と王妃様は歩みを止めてこちらを見てくる。
無礼とならないよう淑女の礼をしてから頭を上げると二人揃って驚いた顔をしていた。
驚きますよね。だって自分の息子が婚約解消した相手の側にいるのですよ。
普通の思考の持ち主なら近寄りませんから陛下達の反応は尤もなものだ。
ただ陛下達の様子の変化に気が付かない馬鹿なハリー殿下は一人で話を続ける。
「父上、母上、聞いてください!アイリスが僕との婚約を解消していると訳の分からない事を言い始めたのです!しかも他に男まで作って!酷い裏切り行為です!」
本当に馬鹿ですね。
ハリー殿下との婚約解消を行ったのは私の父と陛下達ですよ。それにカイと婚約した件も二人は当然のように知っています。むしろ祝福してくれている。
裏切り行為なわけがないでしょう。それに裏切ったのは貴方だと言うのに酷い言い草だ。
「ですが心の広い僕はアイリスを許そうと思います!アイリスは僕に構ってもらえずへそを曲げているだけのようですし、構ってやれなかった僕も悪いのです!これからはここにいる愛しいマイラと婚約者のアイリス二人を構うようにします!」
どんな思考回路を持っていたらそんな結論を導き出せるのですか。
陛下と王妃様を見るとぽかんと口を開き固まっています。どうやらハリー殿下が言っている事が理解出来ていない様子。
大丈夫ですよ、彼を除いた全員が理解出来ていないはずですから。
「アイリス、謝るなら許してやる!さっさとこっちに来い!」
一人盛り上がりを見せるハリー殿下が私に向かって手を差し出してきますが、もちろん取りませんよ。
婚約者じゃない男性の手を取るなどダンスでもない限りはしませんから。
まあ、ダンスの誘いであっても彼の手は二度と取りたくないですけどね。
「どうした!早く来い!」
「嫌ですよ」
「ふざけるな!父上と母上も見てるんだぞ!僕に恥をかかせるな!」
その父上と母上と呼ばれた人達は貴方の奇行によって頭を抱えていますよ。後ろを見て確認してください。
ハリー殿下は私の近くまでやって来て腕を取ろうとしますがカイが背中に隠して守ってくれます。
「アイリスに触れないでください」
「お前、さっきからいい加減にしろ!罪人になりたいのか!アイリスをさっさと引き渡せ!」
ハリー殿下がカイを指差して怒鳴り散らした瞬間だった。
低く威厳のある声が聞こえたのは。
「いい加減にするのはお前だ、ハリー」
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