第10話
ハリー殿下の頭の悪い発言に全員が頬を引き攣らせる。
この人は何を言ってるのでしょうか。
あり得ない発言をしているって自覚がないのでしょうね。
人として最低最悪の発言ですよ。
「王太子殿下」
「な、なんだ…」
「馬鹿じゃないですか」
私の言葉にハリー殿下はぴたりと動きを止める。不敬も良いところですが我慢出来なかった。
彼の馬鹿っぷりに振り回されるのはもう御免なのでハッキリと言っておきましょう。
「私は既に王太子殿下の婚約者ではありません」
「な、なにを…」
「私が王太子妃の行う公務をする事は二度とありません。こちらに居る大好きな婚約者と幸せな家庭を築くのでもう放っておいてください」
カイの手に自分のそれを絡めながら告げる。
隣から蕩けるような笑みを見せられるので応えるように微笑みかけた。
それが気に食わなかったのかハリー殿下は騒ぎ立てます。
「ふざけるな!アイリスは僕の婚約者だぁ!返せよ!」
返せって…。私は物じゃないのですけど。
最悪な言い回しに腹が立っていると絡めていた指を離してカイが一歩前に出る。
何をするのかと思った瞬間、カイがハリー殿下の胸ぐらを掴み引き寄せた。
「ふざけてるのはお前だろ、このクソ王太子。散々アイリスに迷惑をかけてきた分際で彼女を物扱いとは良い度胸だな?」
低い声が会場の空気を凍り付かせた。
カイは温厚で争いを好まない性格だ。
彼が怒るところを見たのは久しぶりかもしれない。
「お前がアイリスを一度でも大切にした場面があったか?ないだろ?他の女性に懸想するし、公務はアイリスに任せきりで自分は遊びたい放題。お前のせいでアイリスの時間がどれだけ失われたと思っているんだ。これ以上、彼女を縛り付けるのはやめろ」
溜まっていた鬱憤を晴らすかのように捲し立てるカイに私を始めとする周囲の人は何も言えなかった。
怯えているのかハリー殿下は顔を青くしながら震えた小さな声を出す。
「お、お前、僕を誰だと…」
「アイリスを傷つけまくったクズ男だ」
ハリー殿下の首を締め付けるカイの腕を叩く。
これ以上は不味い。いくらクズな発言をする人間であったとしても彼は王族だ。
私の為に怒ってくれているのは嬉しいけど、カイが犯罪者になるのは絶対に嫌。
「カイ、手を離して」
「でも」
「カイが怒ってくれただけで十分よ。だからもう離してあげて」
私の言葉にカイはハリー殿下を床に投げ捨てた。床に転がり、咳き込む彼を誰も助けようとはしない。
どう収拾をつければ良いのか考えていると会場の空気がピリッとしたものに変わる。
国王陛下と王妃様の出場だった。
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