幕間3※マイラ視点
ハリー殿下に婚約者がいると知ったのは貴族の女生徒達に囲まれた時だった。
「ハリー殿下には公爵令嬢の婚約者がいらっしゃるのよ!」
「アイリス様に迷惑がかかるでしょ!」
「平民の分際で調子に乗らない事ね!」
突き飛ばされて全員に睨まれる。
ハリー殿下に婚約者?
しかも相手は公爵令嬢?
そんなの知らなかった。彼に興味がなかったせいで調べようとも思わなかった。
よく考えれば王太子である彼に婚約者がいないわけがなかったのに。
どうして婚約者がいる考えに至らなかったのか。
「今後ハリー殿下に近寄らない事ね!」
「全くこんな子を相手にするなんて馬鹿殿下はどこまでいっても馬鹿ね」
「アイリス様が可哀想だわ」
言葉を返す気にはならなかった。
自分のやってしまった事の重大さに気がついたから。
「ふん、とりあえずハリー殿下に関わらないでちょうだい!」
「そうよ。平民は平民と仲良くしてるのがお似合いよ!」
そう言って立ち去る貴族の女生徒達。
泣きたくなったのは囲まれたのが怖かったからじゃない。王族と公爵家に働いてしまった不敬で裁かれることが怖かったから。
どうしよう…。
私どうしたらいいの?
このままじゃ家族にも迷惑がかかってしまう。
そう思った私はハリー殿下を避けようと思ったが無理だった。
「やぁ、マイラ」
「殿下…」
こっちの気など知らないハリー殿下は相変わらず私に関わってくる。
嫌な顔なんて出来ない。必死に取り繕った笑顔はどんな風に見えていたのだろう。
「あの、殿下」
「どうしたの?」
「で、殿下には婚約者の方がいらっしゃると聞きました。私と二人で会うのは良くないのではないでしょうか」
金輪際関わらないでほしい。
強い気持ちを込めて言ってみた。
それなのにハリー殿下はそんな事かと笑ってくる。
「ああ、アイリスの事?気にしなくていいよ。彼女はみんなに愛されてるから僕が大事にする必要はない」
なにを聞かされているのかさっぱり分からなかった。
困惑している私に気が付かない殿下は満面の笑みを浮かべる。
「僕はアイリスよりマイラといた方が楽しいんだ」
ニコニコと言われるが理解出来ない。
婚約者が居ながら他の女性にこんな事を言えるハリー殿下が気味悪く見えた。
「ああ、そうだ。今度お城でパーティーがあるでしょ?マイラの事は僕がエスコートしてあげるから」
「でも、アイリス様は…」
「気にしなくていいってば!」
声を荒げるハリー殿下。
怖くなりすぐに頭を下げる。
「も、申し訳ございません」
「いいよ。ああ、ドレスも贈ってあげるからね。全部僕に任せて」
私の立場をどんどん悪くさせる殿下。
誰か助けて。
そう願ったが逃げられずパーティー当日を迎えてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。