第13話 前の名前  元保護犬の過去

動物病院の待合室で、ビーグルの男の子と目が合った。

そーっと無言で、頭の中で語りかけてみる。

「こんにちは。お名前、教えてくれる?」


<ボブ>


改めて、飼い主さんに聞いてみる。

「ワンちゃんのお名前、なんですか?」

「ペロです」


え??外れた???うーん、聞き間違いか??

まだまだ修行が足りんわ・・・と反省しつつ、


自分は犬達と話が出来る事。

今、犬に名前を聞いたら、ボブと答えた事を、飼い主さんに伝えた。


「それ、前の名前かも?この子は、数カ月前にウチに来たばかりなんです。」

      

  !!!


聞けば、保護施設から来たけれど、保護される前の事が全く不明。

足にケガをした状態で保護されたそうで、そのケガの原因も判っていないそう。

飼い主さんが探してくれるのを数ヶ月待っていたけど、現れなかったから、

保護犬として譲渡されたと。


そこで、ペロ君に聞いていく。

「お名前は?前の名前?」

<ボブ。○川ボブ>

「ケガの原因は?」

乗用車の後姿が視えたので、車にはねられたと判断。

「どうして飼い主さんは、君を置いていったの?見つけられなかったの?」

<車に乗って、遠い所に行ってた。

 いつも、車から降りて、自由に走り回って戻っていた。

 ちょっとくらい戻らなくても、後で帰ってくるだろーという感じだった。

 その日は、遠くで道に迷っていた時にはねられたから、車に戻れなかった。

 犬が戻らないからと言って、保護施設を探すような飼い主じゃなかった。>

 農家の納屋みたいな所で、飼われている姿。

 軽トラと、帽子をかぶったおじさんの姿が視えた。


飼い主さんに、ペロ君との会話内容と、見えた情景を伝えた所、

「あー!この子が軽トラばっかり見てるって、旦那が言ってました!」

そっかぁ。

君は、軽トラの荷台に乗ってお出かけするような生活をしてたんだね。

前の飼い主さんを、探していたんだね。

でもね、飼い主さんは、代わってしまったんだよ。


「ペロ君、これからどうしたい?」

<お父さん、お母さんが優しい人だから、ここで頑張る>


うんうん、今の生活と新しい飼い主さんを受け入れてくれてるね。良かった。

お父さん、お母さんと仲良くね。


ペロ君の幸せを、祈ってます。




 

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