第8話 強いのは誰だ?  勘違いの子犬

生後半年、お家に来て4か月の体重3キロの子犬ちゃんの相談を受けました。


家族を噛む。来客に吠えまくる。名前を呼んでも振り向かない。

散歩で会う大型犬に吠えまくる。抱っこすると噛む。歯磨きもさせない。

飼い主の男の子曰く、

「名前を憶えてないんじゃないかな。ノーも判ってないと思う」

早くもアルファ症候群に、お育ちっぽい。

イヤイヤイヤイヤ!4か月もいて名前を知らないなんて、ありえません!

子犬ちゃんとコンタクト開始。


「お名前呼ばれて振り向かないのは、なぜ?自分の名前、判ってるよね?」

<メンドクサイ>(おい!・・・落ち着け、私)

「君のご主人は誰?」

<お母さん>(ごはん貰うからな。そこは判ってるわな)

「子供たちは?」

<チョロイ>(・・・踏ンデイイデスカ・・・)

「お散歩で会う大きなワンさんに、なんと吠えているの?」

<ワタシが、家で一番強いのよ!

 アンタより、ワタシの方が強いんだから!!って言ってる>


ソウネーーー。3キロの子犬が一番エライのー。ソオーー・・・。

はい、スパルタ指導入りまーす♪


暴れて噛もうとする子犬の手足を、逃げられない程度に握って横倒しに寝かせる。

大きな声で、子犬ちゃんの目を見つめ(睨み?)一喝。

「君は犬!家族の一番下!!

 お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃんの下!

 何があろうと、人を噛まない!!ノー!」

抵抗するのを諦めて、体の力を抜いてじっとした所で、横倒しポーズ終了。


生まれて初めて怒鳴られたのか?ガクブルの子犬ちゃん。

私としては、かーなーり声を抑えたのだが(ハスキー仕様だし)

チビる程、怖かったらしい。すまんのー。


お兄ちゃんに、毎日やるように言ったのは、以下の3つ。

家族全員誰がやっても、おとなしく横倒しになるよう練習する事。

嫌がっても、抱っこをする事(暴れなくなるまで)

ノーは判らないではなく、やらないだけ。

やりたくない事でも、これは家族のルール!と、やりとおす事。


翌日。

私に抱っこされた子犬ちゃんは、<おにいちゃーん>と助けを呼ぶ。

お?お兄ちゃんを頼ってる??

<おにいちゃん、だいすきー。おねえちゃん、だいすきー。>

「散歩で大型犬に会ったら、なんと言うの?」

<こんにちは~ってあいさつして、

 いっしょにあそんでもらえたら、うれしいですっていう。>


なに?この激変!!!

聞けば、さっそく家族全員に、横倒しのポーズをさせたという。

お兄ちゃん、躾を頑張ったんだね~。いいコだぁあ。


子犬ちゃんは、今まで外の世界を知らなかったからねー。

家の外には、こんなに怖いオバサンがいるって判って、

自分が小さい事、弱い事を知ったんだね~。

君を守ってくれるのは、お兄ちゃんお姉ちゃんだって、理解できたね。

良いコに、育っておくれ~。


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