第7話 嗤う天使たち。
朝食を
一方のミカエルの特別製スマホ型端末『
「リン、悪魔を倒せばシロを回収できるかもしれないよ。キミのHPもこれで回復できる」
「い、急いで行きましょう!! どこですっ? どこに私のシロが!?」
自身の生存がかかっているため、焦った彼女は師匠であるミカエルの両肩をグワングワン揺らして急かす。
ちなみに正確に言うならば、そこにあるのはシロではなくクロの化身である悪魔なのだが。
「落ち着いてよリン。奴らはそう簡単には姿を現さない。きっと人間を
「ホントですかっ!? 適当なこと言わないでくださいよ!? なにしろ大事な私の命が
悪魔の傾向として、人間のココロを思うままに操り
そして悪行をするように仕向けることで彼らはクロを集めるのだ。
ミカエルのかつての師はそれを人間を使ったクロの養殖だと
「大丈夫だって。悪魔っていうのは執念深いんだ。一度決めた
「ほんとうですか!? ウソだったら許しませんよ!? 私が消滅したら悪魔になって化けてやりますからね!?」
ブラウンの瞳をウルウルとさせながら、必死に訴えるリィン。
そこまで焦っているなら、普段から人間界でのんびりショッピングしたり、テレビで一日中アニメなんて観ている場合では無かっただろうに。
ともかく2人は朝食を中断し、悪魔が出現したと思われる場所に急行することにした。
◇
「ここ……ですか?」
「うん。天界からの情報では、ココに悪魔出現の証であるクロの集中があったらしい」
大急ぎで準備してやってきたのは、大小さまざまなビルが立ち並ぶオフィス街だった。
いつものように人間らしい服装にチェンジした2人は、朝の通勤で会社員が忙しく出入りしているビルの前に立つ。
ちなみに移動は徒歩とバスや電車などの公共交通機関だ。
端末を使えばある程度の距離はワープできるのだが、それもHPを消費する。
今はそんな余裕も無いので、節約だ。
「さて、ここでボーっと立っていても仕方がない。さっそくこのビルの中に入ってみよう」
「なんだか周りは大きい人間ばかりでちょっと私たちは浮いている気もしますが……善は急げですものね!」
かろうじて学生の社会科見学か、親に会いに来た子どもにも……見えなくも無いかもしれない。
よくよく観察すれば、至る所が人間離れした白い変人だとバレてしまうが。
ともかく、天使の2人は白昼堂々と高層ビルへと入っていったのであった。
◇
ミカエルの端末に表示される地図は、確かにこのビルの中のフロアを指していた。
2人はエレベーターに乗ってその該当フロアへと
『24F スマイル&ハッピーメイカー株式会社』
今から2人が向かおうとしている場所。
エレベータのフロア一覧にはそう表示がされていた。
「人間ってみんな私たちみたいに仕事をしているんですよねー? 生きるために働かなきゃいけないって何だかとってもシンパシーを感じちゃいますよぅ!」
「テレビでお仕事系のドラマをやっていたので私、知っているんですよ!」とイマイチ信用のできない話をするリィン。
たしか天界でも人間界についての勉強をさせていたはずなのだが、知識が変な方向に
「彼らはボクらと違って食べなきゃ死んでしまうからね。みんな生きるために必死なのさ」
そんなやりとりをしている間に、エレベーターは2人を目的のフロアに運び終わったようだ。
扉が開くと、冷たい白色照明に照らされた無機質な廊下が広がっている。
良く言えばスタイリッシュな雰囲気なのだが、廊下のそこかしこに段ボール箱が積まれていて、とてもゆったりとできる環境ではないのは
これが人間が仕事をする場所なのかと戸惑う2人。
初めてこういった場所に来た
フロアの各セクションをなるべく人に見つからないように移動して行くと、さらに驚くシチュエーションに出くわした。
「オイィ! テメェなんで始業2時間前に来てねぇんだよ! 仕事舐めてんのか!?」
「ノルマは達成して当たり前だからノルマなんだよぉ! お前はそれすらできないとか何しに会社来てんだァ!?」
「残業代を
このフロアの各所から聞こえてくる、ありとあらゆる
これはとても正常な人間が仕事をする場所とは思えなかった。
そしてなにより――。
「これはいったい……」
「ひどい……なんて
天使だからこそ分かる、このフロア一帯に広がるクロの重々しい気配。
ただの人間が発する量のクロを遥かに超えたソレが、このフロアに存在していた。
――つまりこのフロアには悪魔が居る。
さぁ、悪魔狩りの開始だ。
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