天使ミカエルは見返らない~言葉責メ能力ヲ駆使シテ、アクマデ親友ヲ取リ戻ス~
ぽんぽこ
第1話 マガイモノの2人。
「あぁ!? てめぇ急に出てきやがって、ナニモンだ!?」
月曜日の昼下がり。
とある都内の高校の中庭で、白昼堂々と
彼らと対するは、頭の天辺から靴のつま先まで真っ白な見た目をした美少年。
まるで興味がなさそうな
そして地面の上には、不良たちと同じ制服を着た坊主頭の男の子が
「ん……。ボクが誰かなんて、どうだっていいよ。そんなことよりも早く要件を済ませたいんだけど。その方がキミたちにとってもまだ有益でしょう?」
年の頃はそう変わらないだろうに、白の少年は彼らの
むしろ
「なにをゴチャゴチャうぜぇこと言ってんだよ、このモヤシ野郎! 用が無ぇんだったら、どっかいけよ!」
「つーか、何なのコイツの白さ! 今の時代に白髪ってマジ?」
「服も白一色とか頭おかしいだろ。精神病院から出てきたんじゃね~?」
この不良ピアスの後ろにいた子分AとBも追従して、少年への
だが、白の彼には柳に風。変わらず無表情のままだ。
「もう気は済んだ? それじゃあそろそろ、ボクの要件も聞いてほしいんだけど。――いいかな?」
「くっ……。よ、要件だと……?」
まるで仮面を貼りつけたかのように急にニッコリと
それでも白の少年は彼に構うことなく、そのまま再び口を開く。
「キミたち……この倒れている男の子にイジメをしていたね? それも日常的に、繰り返し、繰り返し。
「え……はあっ!?」
見ず知らずの、それも
もしかして、教師の
いや、いずれにせよご
そう判断した彼らは
「ははっ。急に何を言い出すんだよ。俺たちはそんなことはしねぇって」
「ふーん? じゃあこの坊主頭の子は何なの?」
可哀想に。意識を失ってぐったりと倒れている、優しそうな顔の男の子を指さす少年。
目の前に証拠が転がっているのに良くもまぁ、いけしゃあしゃあとそんなことを言えるものだ。
「知らねーよ。……いや、こいつとは昔からの友達なんだ。だからこれは、フツーのケンカ。よくあるタダのじゃれあいだっつーの」
「ぷっ……!!」
「そ、それはお前、さすがにっ……ギャハハ!」
ピアス少年のあまりにも苦しい言い訳に、仲間であるはずの子分たちでさえ
被害者側からみれば、あまりにも非道な言動。
普通の人間なら怒りに身を震わせるほどだ。
……しかし正義の味方かと思われた白の少年は怒ることもなく、気味が悪いほどのニコニコ顔。
「ふふ、そっか。キミらは仲良しなんだね。いやぁ、ボクにも大事な親友がいてさ。彼とはしょっちゅう殺し合いのケンカをしていたんだよ。あぁ、懐かしいな。また
――殺し合い。
不良同士のセリフならありがち過ぎて
実感の
「ま、言いたくないのなら仕方がない。ここはボクが大人しく諦めよう」
「へ? ……へへ。そうかよ。ならさっさとどっかに行けって!」
このおかしなヤツからやっと解放されるという期待感が、
『さぁ、コイツが去ったらまたオモチャを使った
そんな
「んんー? キミたちは、何か勘違いをしているよ。諦めるって言ったのは、ボクの能力を使わずに済むことをってだけだから。もし誤解させちゃったのなら謝るよ。ごめんごめん」
「は……? のう、りょく?」
「うん、もう時間が
白の少年が、手のひらを不良少年たちに
突然の現象に、時が止まったかのように彼らは目を見開いて固まってしまう。
否、さっき質問を受けた少年だけは
「……ソノ質問デアレバ、イチ万円ニナリマス」
「あっそう。はい、じゃあコレで。さぁ、さっきボクが聞いたことについて教えてくれるかな?」
「ハイ……私ガ、コノ男ヲ
先ほどのセリフから一転し、今までやってきたイジメや犯罪行為をイチからジュウまで
白の少年は静かにそれを聞き通し、必要な言葉を得ると満足そうに
「ありがとうピアス君。ボクもあんまり手持ちのお金が無かったし、案外安く済んだから助かったよ。それじゃあ、ボクは行くね。バイバイ」
「……え? あれ、俺はいったい……?」
白の少年がパンパン、と手を叩くと、
「お、おい!? 今のは何だったんだよ!」
「俺が知るかよ! 急に頭がボーッとして……あれ? アイツ、どこに行った?」
我に返った不良たちが何事かと
◇
そして数時間後。
彼らは突然駆け付けた警察たちによって補導された。
それも今まで重ねてきた犯罪行為が全て
彼らは当然大人しく認めるはずもなく、やっていない、知らないと散々
どうにか解放され、保護者に
どうやら学校側から家族へ自主退学するように連絡があったようで、当初彼らの親もそれには
そこへ警察からの連絡という追い打ちがあり、こうなっては自分の息子の将来を諦めるしかない状況にまで追い込まれていた。
彼らが白の少年と出会ってからここまで、これら全てが僅かな時間で行われていた。
――そう、白の少年は普通の人間ではない。
それどころか、彼は人間ですらない。
では彼は何をしたのか……?
白の少年がその見た目に反して軽々と男の子を
それは、イジメられていた男の子の家だった。
◇
「……というワケで、この子のイジメに関する事実は得られたよ。――で? 貴方たちはコレをいくらで買ってくれるのかな?」
男の子の父親である男性とその妻とみられる女性は、息子を抱えてやってきた白い少年に二重の意味で
一つ目は、ワープでもしてきたかのように自宅のリビングに突然現れたこと。
そして二つ目は、息子が同じ学校の同級生に酷いイジメを受けていたという話をされたことだ。
「ウチの息子が……イジメを……!?」
「そんなっ、まさか……」
まさに
確かに大人しく真面目な
「ああ。イジメられていた理由とか、今後どうするとかはボクには興味ないから。とにかく、今日はもうさっさと天界に帰りたいんだよね。ってことで……『売り言葉に買い言葉』。はい、息子さんの
不良少年に対してやったように、親たちにも能力らしきものを発動した。
神秘的な光が同じように2人を包みこむと……。
「……ゴジュウ万円出ソウ。感謝スル」
「ボクはそれでいいよ。まいどあり」
簡単にそれだけ返すと、用意されてきたお金を受け取った白の少年は再び姿を消した。
「……はっ!? ……い、今の少年はいったい!?」
「分からないわ……。羽は無かったけど、まるで天使のように美しい子だったわね」
「確かに、悪魔のように美しい男の子だった。いや、今はそれどころじゃないな」
「えぇ、そうねアナタ。さっそく動きましょう!!」
我に返った両親は息子を襲った悲劇に我を忘れて
自身の権力、金。全てを使って、息子を傷付けた者へ
しかしその結果を見ることも無く、先ほどの白の少年は白い空間を軽快に歩いていた。
そして彼の後を右半分が白、もう半分を黒の髪をした少女がトテトテと追いかける。
「待ってくださいよ、ミカエル様~!! 何でまた相棒の私を置いて人間界に行っちゃったんですかぁー! 折角の初任務だと思ったのに!! それに天使の仕事なら、ちゃんと手続き
少女は「ずっと天界で待ちぼうけだったんですけどー!!」と
一方のミカエルと呼ばれた白の少年は、少女の方を見返ることも、
彼は地の果てまで
少女が言った通り、彼は人間ではなく、全身をシロで染めた天使だ。
そしてここは天界――別名、シロのセカイ――と呼ばれる、天使たちが
「ちょっ、待ってくださいってばー! みーかーえーるー様ぁー!!」
しつこく話し掛けられた上に、服の
さすがにうっとおしくなったのか、
「あのさぁ、いつキミがボクの相棒になったんだよ。それにボクの事は
「ぷぇー、痛いでしゅー、シショー! 頭グリグリは止めてーっ!」
両拳で少女のこめかみをグリグリとこね回すミカエル。
髪の毛をグシャグシャにされながら、リィンは涙目で師匠の暴力を抗議する。
「だいたい、ボクはボクのやりたいようにやるんだ。人間界のことも、天界のルールなんかも知ったこっちゃない。だからキミも手続きなんて面倒なモノ、適当に誤魔化し「でも天使長であるラファ様がシショーのことをお呼びでしたよ?」……はぁ、やっぱりバレちゃったか。あーぁ、彼は
ブツブツとボヤキながら、ミカエルは自室に戻ろうとしていた足をリィンが言っていた天使長が待つ部屋へと変えて歩き出す。
「もう! 私のいう事は全っ然聞いてくれないのにー! シショーのばかーっ、アホーっ!!」
弟子を置いて遠く小さくなっていくミカエルに向かってリィンはピョンピョン飛び跳ねながら
天界に年月という仕組みがあるかは知らないが、ここ最近ではこんな
――だが、その日常もここまで。
そして今ここから、2人は自身の隠された運命を知る新たな旅に出ることになる。
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