第16話 仕掛ける天使たち。
「だから私は戦うつもりで来たんじゃないっていうのに……私、いえ私たちは貴方たち2人を誘いに来たの。ねぇ、あの
全身を黒の修道服で
ミカエルの直感と
「あの御方……だって?」
「そもそも私たちは天使だよ!? 悪魔なんかと一緒に居れるわけがないじゃないですか!」
シロとクロ。
それは天使と悪魔の代名詞であり、存在理由。
善と悪とも言い換えられるこの因子は彼らにとって相容れるモノなどではなく、ましてやともに共存などできるはずが無かった。
「あら……本当にそうかしら? 案外気が合うかもしれないわよ。……ねぇ? 悪魔と親友だったミカエルさん?」
「え……?」
「あらあら、そっちの女の子には教えてあげてなかったの? 冷たいお師匠様ねぇ」
「本当に……どこまで知っているんだ。まさか、アンタの言うあの御方って……」
ギリ、とミカエルの槍を握る手の力が強まる。
彼の過去、それもリィンですら知らないことまで知っている人物は相当限られてくる。
「えぇ、そうよ。私がお仕えしているのは、かつて最強にして至高といわれた元天使長フェル様です。私にとっては偉大な父にして神……そして最愛の人」
自分でフェルの名を出しただけで「あぁ……」と
彼を尊敬、愛し……そして
それはもう
「やはりアイツの仲間だったか……」
「そんな、あの悪魔に心を売った堕天使フェルの!?」
若干予想していたミカエルと違い、リィンはフェルの名に
天界最大の反逆者にして、最大の
しかし、リィンの言ったことは狂信者にとって禁句だったようだ。
「小娘ェエエッ!! あの方を堕天などと言うなぁあ!! 天こそがあの方を見捨てた癖になにを!! なにを勝手なことをぉおお!!」
先ほどまで何を言われても穏やかな様子で返していたイネインは、リィンの言葉に
「えっ、ちょ? な、なんで急に??」
「リィン……シロを至上とする天使にとって、クロに堕天することは最大の屈辱なんだ。そもそも、堕天しているのに存在を保てていること自体が謎なんだけどね。まぁそれはともかく、今はコイツをどうするかなんだけど」
もはや勧誘だとか、話し合いができる状態には思えない。
なにしろ彼女のクロを抑えていた修道服が己のクロの
「あの御方を侮辱することだけは許せない……ユルセナイユルセナイ!!」
「やっぱり悪魔と会話するのって難しいなぁ。なんでアイツもこんなのを
「知りませんよぉ……!! どうするんですかミカぁ~」
リィンもここ数日で戦闘を重ね、シロのレベルも上がってきているとはいえ、Aランクの悪魔との戦いに参加できるほどでは無い。
「とにかく、リィンは後ろで待機。アイツがどんな攻撃をしてくるか分からないからね。必要に応じて能力で防御とボクのフォローをして欲しい。あとは基本、回避で。分かったね?」
「は、はい!! お気をつけて!!」
ミカエルは彼の矛盾を両手に持ち、クロの粒子雲を
――ガキンッ!!
予め『
特に能力を使用したとは思えない彼女の粒子雲に
「くそっ、なんなんだコレは!」
「ふふふっ。どうです、この『
ミカエルはその後も何度も攻撃を仕掛けるが、その都度イネインを覆う黒い雲が的確に彼の槍を追尾して
そして何合かやりあった後、このままでは
「もっとシロの光度を上げるか? いや、あの無限に
あまりにもこの襲撃者の謎が多すぎる。
仕方ない。ここは大人しく天使長ラファに連絡を取って救援を……。
「あぁ、それはできないぜ。ここはもう、俺が逆にクロの結界を張らせてもらったからな」
ふいに今まで誰も居なかった空間から声が聞こえた瞬間――ミカエルを背後からの鋭い攻撃が襲った。
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