第18話 天使ミカエルと堕天使との開戦。
ミカエルのかつての師、フェルとの戦闘が始まった。
彼の得物は1メートル半ほどの銀色に輝く
対してミカエルのは槍と盾だ。
必要に応じて槍は長さや形状を変えることができるが、そんなことは彼に戦闘を教えたフェルも当然知っている。
「おい、ミカエル。俺たちの過去の戦歴を覚えているか?」
「――そんな昔の事は覚えていませんね」
「んだよ。俺より若ぇくせに
「……だったらわざわざ聞くなっ!!」
ミカエルが
だがフェルは剣で受けることも無く、
「遅ぇ遅ぇ。狙いが相変わらず素直過ぎんだよ。それに攻撃パターンが単純すぎ」
「う、るさい!! 死ねッッ!!」
しかし、このフェルに攻撃の
フェイクを使った手数と能力使用による強化で、
さすがに高速の槍
「うーん、多少斬撃は速くなったか? だが……っ」
「ぐううっ……ち、っくしょっ!」
力においても、師匠フェルには敵わない。
盾を捨て、両手で
いや、以前のフェルであればここまでの力は無かったはずだ。
彼の能力はこんな直接的な力を行使するモノではないからだ。
「アンタ……いったいアレから何をしていた? いったい何のために天界を……なぜボクを捨てたんだ!?」
さらに
彼がまだ天使長だったあの頃。
誰よりも偉大で、心から憧れていた師匠だったのに。
家族であり、父のようだとさえ思った時期もあった。なのに、何が彼をそこまで変えてしまったのか。
悲痛そうな顔をするミカエルを見たフェルは笑顔を消し、その深紅の
「知りたいなら教えてやるよ。その上で俺に協力するようなら、また家族として迎えてやる」
「な、なにを……」
「いいから聞け。あれはお前と出会う前だった……」
◇
当時既に天使長として君臨していたフェルは、天界の頂上フロアで執務をしていた。
「なに? 原因不明のクロが集まっているだと?」
白の執務机に両足を乗せて書類を読みながら、部下からの報告を受けるフェル。
そんな不真面目な勤務態度に眉を顰めることも無く、部下は言葉を続けた。
「はい。監視塔の大天使様が確認されたようです。当初悪魔かとも思われたのですが……」
「違ったと?」
「そのようです。その場所に急行した天使たちが
「ふむ……」
通常の悪魔というのは、人に取り憑いている場合も含めてその場からあまり移動しない傾向がある。
それは一度狙った
そしてそれは
だから人間界のクロ因子の高まりを監視する役割を持った天使が危険視するほどの値が出たのに、その場所と思われる付近に痕跡すら残っていないというのは謎なのだ。
「分かった。その案件については直々に俺が出向こう。場所は?」
「日本という島国の都市だそうです。詳細はこちらに」
部下はクロを観測されたポイントが記された地図をフェルに手渡す。
短い期間の間に、そう離れていない範囲で数回確認されているようだ。
「ふむ……こう見るとやはり特定の人間に悪魔が
さっそく転移によって観測ポイント周辺に降り立ったフェル。
自らの脚でクロを測定しつつ調査をしていくが、やはり不審な者や悪魔の気配は感じることができない。
彼の長年の
それに別段誰かを傷付けたりしてクロを集めるような行為も確認できなかった。
割と単純な性格をしている悪魔が、敵である天使を呼び寄せるようなマネをワザワザするとも思えない。
つまり、今回の件は
「はぁ……無駄足だったか。まぁどうせここまで来たんだ。暇つぶしにちょっと人間界を歩いて回ってみるか」
天使長という役職に就くまでは、バリバリの悪魔狩りとして活躍していたフェルは、人間界を歩くのが好きだった。
自分たち天使とは違い、シロとクロの
その時と場合によってコロコロと感情や判断が変わっていく様は白を
「ん……? なにか喧嘩をしている声がするな。どれどれ?」
彼がその中でも特に興味があったのは、愛と怒りの感情である。
人間は愛を大事にする。しかし、愛ゆえに憎しみに
したがって愛が無ければ、憎しみも生まれないと考えていたのだ。
その相反する考えは、まるでシロとクロのようで面白いと感じていた。
最近の彼のテーマは愛による
そんな彼が生の言い争いに関心を持つのは必然であった。
今も絶賛暴言が聞こえるその場所へと足を向けていた。
「夫婦……か? いや、それにしては
そこには若い美しい女性と、その女性を
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