閑話 ミカエルと悪魔フェイトとの出会い
「師匠、これはいったいどういうことですか……? 場合によっては貴方ごと滅しますよ?」
ミカエルは当時天使長であり、師匠でもあったフェルに呼び出され、人間界の日本、富士山の麓にある樹海に来ていた。
そしてそこで「紹介したい奴がいる」と言われ、邂逅したのが――悪魔フェイトであった。
「心配するな。コイツは見てくれは悪魔だが、良いヤツなんだよ。人間だって殺したりなんかしねぇ」
「……そういう問題じゃないでしょう!! なぜ天使長ともあろう貴方が悪魔と一緒に居るんだって言っているんです!!」
「……フェル。コイツ、話聞く気無いよ。頭固すぎてダメ。これ以上は時間の無駄」
ミカエルがフェルに興奮して言い募っている横で、全身がカラスのように真っ黒な少年はそうポツリと呟く。
「おい、誰がなんだって? お前みたいな悪魔が何をマトモそうなこと言ってるんだよ!?」
「ほら、初対面でこんなにケンカ腰なんだもん。天使って悪魔よりよっぽど争うのが好きみたいだね」
「……っ!? こ、こいつ……!!」
まるで悪魔の言葉に敵わないミカエルはどんどんヒートアップしていき、ついには彼は端末を取り出し、『釣り合う矛盾』を召喚し始める。
「おいおい、ミカエル。相手は丸腰なんだぞ? いきなりおっぱじめようとするヤツがあるか!」
「だって師匠……!! こいつがっ……!!」
まるでいじめられっ子といじめっ子が教師に怒られているような図だ。
これでもここにいる面子は全員数百歳を優に超えているのだが、見た目も含めてとてもそうは見えない。
「まぁいい。そんなにケンカがしてぇんなら、一度お前らでやってみるがいい。だけど、コロシは無しだ。いいな?」
「ふん、いいでしょう。俺の腕を見せてあげるよ。ただ、ちょっと手が滑って悪魔の首を刎ねたりしても許してくださいね?」
「ははっ。そんなに腕に自信が無いの? ならボクが手取り足取り教えてあげようか」
「……ふふふ」
「ははは……」
「「……殺す!!」」
◇
そして天使と悪魔は1日かけて殺し合った。
お互いに手足を損失するほどの大ケガを負わせたが、致命傷まで至らなかった。
結局決着もつくことも無く、最終的には2人とも同時に力尽きる。
両者痛み分けで再戦を誓い合ったが、戦場となったその樹海は散々な光景となっていた。
のちに天使の修復班が総動員するハメになり、ミカエルとフェルは2人揃って当時まだ大天使だったラファにしこたま怒られることになったが、それは当然。ただの自業自得だっただろう。
そしてミカエルは任務で人間界に降りる度にフェイトとの殺し合いというなの交流を深めていった。
そんなことを何度も繰り返している内に、次第に2人は戦いの後に言葉を交わすようになっていったのだ。
「なぁ……なんでフェイトは人間を使ってクロを集めないんだ……?」
いつも通り、ボロボロになった姿で大の字になって地面に転がっているミカエルとフェイト。
ゼェゼェと荒い息を吐きながら、ミカエルは隣で寝ているケンカ友達にそう問うた。
「えぇ……? なんか面倒でしょ? そんなチマチマと人間を操るのは性に合わないよ。ボクはその辺に漂っているクロを少しずつ食べるだけで生活できるし。……こうやってキミと殺り合っている方が楽しいんだ。そういうキミは、なんでシロを集めているんだい?」
フェイトはその言葉使いの割に精悍な顔をクルリ、と隣りに居る白い友人に問い返す。
「なんでって……それが天使だからとしか言いようがないし。ボクはそういう生き方しか知らないんだ」
「ははっ……キミ、ボクの喋り方が移ってるよ?」
「そ、そんなことないっ!! ちょっと間違えただけだし!!」
ミカエルが顔を真っ赤にして必死に言い訳をするが、悪魔っぽい笑顔を浮かべたフェイトはそんな彼をイジり続ける。
――そんな光景はとても仲の悪い天使と悪魔には見えなかった。
そして数年後。
悪魔フェイトは天使長フェルに刺され、親友ミカエルに看取られながらこの世から消滅した。
「ミカエル……ボクの分まで生き、て。ボクのことを……忘れ、いで……」
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