第43話 変化
「男爵がどうして?」
アシュベルとカーディルに控室に連れて来られた。
「ほら」
「ありがとう」
カーディルはハンカチを濡らして持ってきてくれたので私は赤くなった手首にそれを巻いた。不愛想な渡し方だったけど心配してくれているのは十分に伝わった。
「どうして男爵が?」
「魔法塔でずっと張り込んでた。本人が出て来なくても必ず食事や掃除などの世話をする人はいるはずだから、そいつに金を握らせて代わりに中に入った」
今回は助かったけど、そんな信用できない人が男爵の周りにいるという新たな問題が発生した。まぁ、それは男爵側がどうにかするだろう。私がどうこうすることではない。
「これでおさまって欲しいものだね」
「はい」
アシュベルが淹れてくれた紅茶を飲む。ほっと温かい紅茶が体にしみわたり、安心した。
自分でどうにかできると思っていたし、どうにかするつもりだった。でも実際はこうやって誰かの助けを借りないと何もできない。なんて、情けないのだろう。
「レイファ、君は何でも一人で解決しようとし過ぎだ。少しぐらい頼ってくれると嬉しい」
「俺は他国の人間だから色々制限がついて面倒くせぇけど、だからこそお前たちにできないことができることもある。あっちだった他国の王族である俺にそこまで我を通せないだろうしな」
彼らは攻略対象者。だからこそ遠ざけ、だからこそ利用しようと親しくなるように画策もした。
下心があったから近づいたのに心のどこかで私は彼らを信じてはいなかった。
どうせいつかはアイルを選ぶのだろうと思っていた。
日本にいた時がそうだった。
友達も好きな人も最終的にマヤを選ぶ。
抗いながらも諦観とともに受け入れてきた事実。今世ではそんなことないようにと思っていたけど転生したところで私が私である以上そういうところは簡単には変えられない。でも変えなくてはいけない。
自分らしく生きれるようにもっと上手く生きなければならない。
「ごめんなさい。無理をし過ぎたわ。心配してくれてありがとう。そう簡単には変えられないけど、できるだけ頼るようにするわ」
そうだ。変えよう。本当の意味で変わろう。もう私はミキじゃない。レイファだ。搾取なんてされない。私は私の人生を歩む。
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