第40話 楽しいお茶会?

「労働階級じゃあるまいし、貴族の令嬢が働くなんてはしたないですわよ。こんな方たちが王女殿下の側近候補なんて信じられませんわ。同じ舞台に立ってほしくないですわね」

お茶を一口すすりながらレイチェルは私とシーアンに侮蔑の眼差しを向けてきた。

彼女が着ているドレス

今飲んだお茶の茶葉

彼女が使っている茶器

今日食べた茶菓子

それらは全て労働階級と呼ばれる人たちが作ったものであり、庶民が働いて納めてくれる税金で賄われている。

彼らがいなければ私たちはすぐに飢え死にするだろう。

それに私たちが着ているドレスは到底一人で着れるものではないし、元日本人である私は問題ないけど生粋の貴族令嬢である彼女たちは一人で着れる簡素な仕様になっている庶民の服ですら一人で着ることはできないだろう。

服の着方、ボタンの留め方すら知らない令嬢だっているのだ。

そんな令嬢の方が私は恥ずかしいと思う。なのにそれを誇るとか、ちょっと頭おかしんじゃないのと思うのは私が元日本人だからだろう。

「確かに、同じ舞台に立ってほしくはないですわね」

そう言ったのはシーアンだった。

私たちを貶した言葉を彼女はレイチェルに返したのだ。シーアンは口元を扇で隠しながら侮蔑の眼差しをレイチェルに向ける。

「女公爵に女王陛下。この国にも勿論、他国にも女性が家主や国主になった歴史はあります。あなたの発言はそんな彼女たちを貶めるものよ。そんなことも分からずに浅慮な発言を当然のように行う方と一緒の舞台に立ちたいとは思いませんわ。同じ人種に思われるのは正直不愉快ですわね」

「っ。私はそんなつもりで言ったわけでは。変な勘繰りはよしてください」

反論するも苦し紛れなのは誰の目から見ても明らか。勝負あったわね。

「皆さん、折角の楽しいお茶会です。その辺にして、もっと楽しいお話をしましょうよ」

モリアナは両手をパンッと合わせて、みんなの注目が集まったのを確認してから言う。

「今度のパーティーに着て行くドレスの話とかしませんか?あっ!どうせならみんなでお揃いにします?」

「「「いやよっ!」」」

私を含めた三人の側近候補がすぐさま拒絶をした。

モリアナも拒絶されるのが分かっていたのか特に嫌な顔をすることはなかった。それどころか「ですよねぇ~。私も嫌です」なんて言う始末だ。これにはちょっと脱帽だ。

だが今度のパーティーに着て行くドレスの話は悪くない提案だ。

令嬢たちはドレスが被らないように予め情報を集めてからドレスを作るのだ。そして今度のパーティーはアイルと側近候補の顔合わせなのだ。できたらサボりたい。仮病を使ってでも。けれどそんなこと父が許すはずがない。

仮病ではなく本当に体調が悪くてもあの父なら無理をしてでも行けと言うだろう。


ああ、面倒くさいな


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