第44話 意識の変化

「レイファ」

「アレックじゃない。どうしたの?」

昨日のこともあってか少し肩の荷が下りて今日はとてもいい気分だった。

いつも通り訓練に参加しようと騎士団に行くと真っ先にアレックが近づいて来た。後ろには気まずそうな顔をした複数の男性がいる。

「彼らが君に話があるんだって」

「話?」

騎士から聞く話はいつだって私の嫌味ばかりだった。

普段なら「私にはないわ」と言って無視をするところだけど、彼らの様子を見るにどうも聞いた方が良さそうだ。

「何?」

話があると言う割には彼らは一向に話そうとはしない。何を言えばいいのか、どう言えばいいのか迷っている感じだ。

アレックが連れて来たからおかしなことを言ったりはしないと思うけど、だからってこっちが話し始めるまで待ってあげる義理はない。

今まで散々、私のことを貶してきた連中なら尚更だ。

「ほら」とアレックに再度促された彼らは私を見た後、勢いよく頭を下げた。いきなりの行動で驚き、固まる私に気づかずに彼らは続ける。

「この前の森での野外練習、お前がいなかったらまマジでヤバかった。俺たちはまだ新米騎士で経験とか何もないけど、でも、それだけは分かった」

「正直、お嬢様の遊びの延長なんだと思ってたし、実際才能があるのは訓練中に剣の扱いを見てたら嫌でも分かる。だからその才能に嫉妬してたのもあった。それで余計にお前のことが気に入らなかったし、認めたくなかった」

「王女様に媚を売る為だって思ってた。でもあの夜会俺も参加してたんだ。だからお前が心底、王女様のことを迷惑に思っているのが分かるし、俺も正直あれはないと思った。非常識すぎ。お前が王女殿下に媚を売っていないのがよく分かったし、俺でも関りに合いになりたいとは思わない。お前のことを誤解していた」

「すまなかった」

「ごめん」

「申し訳ない」

と、それぞれ頭を下げてきた。

急展開すぎて頭が追いつかない。けれど、少しでも人の意識を変えていけたらこの先やりやすいだろうし、平穏な人生を送れるはず。何よりも嬉しい。

「謝罪を受け入れいます。急に女の、しかも公爵令嬢である私があなた達騎士の訓練に参加したら誰だって穿った見方をしてしまうわ。立場が逆だったら私でもそうだもの。これからもよろしくね」

「「「ああ」」」

私のやっていることは無駄ではないのだと改めて実感した。

諦めなければ必ず活路は開けるんだ。私は絶対にアイルの支配領域から脱してやる。思い通りにはいかない。乙女ゲームなんて知らない。

この世界はゲームじゃない。現実なんだとアイルに分からせてやる。

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