第2話 ユミーコ、死ぬ

 悪役令嬢星人は、父親と母親とマカ親と運の四親の元で産まれる。


 フーツ星人と同じくマカ親の文化を持つ理由は定かではないが、宇宙人学者たちの論争の的は、そこではなかった。父親と母親の交配中にマカ親がお餅を突っ込むところまでは同じだが、そこに更に、一か八か、の運が絡むのだ。


 父親もイチかバチかだし、母親もイチかバチかだし、マカ親もイチかバチかで。

 産まれて来る子供もイチかバチか、なのだ。


 そんな一か八かを乗り越えた者だけが、強くて逞しい悪役令嬢にすくすくと育つという。



「ユミーコ!私のカレ←シと一か八かしたわね!この泥棒猫!ビッチ!貧触覚!」

 泣き叫びながら一直線に突進してきた女生徒が、ユミーコの腹を包丁でさくっといった。


「何をか、勘違いしてるのよ。ただ、お餅を食べさせ合いっこしただけ……ぐふっ」


 ユミーコは死んだ。


 どくどくと流れ出す血は麺つゆ色だった。それを見た女生徒がはっとする。

「そんな……てっきりぽん酢色だとばかり思ってた。それに……」


 ダシの効いた綺麗な麺つゆ色の血液。しかも沢山のひまわり柄。

 

 普通、悪役令嬢の血液柄と言えばバラ柄のはずなのに……。

 

「ユミーコ。実はあなたは心の優しい子だったのね……それなのに、私ったらなんてひどい事を」


 よよよと泣き崩れる女生徒。しかしもう何もかも手遅れだった。


 ユミーコは死んだ。

 そんでもって転生した。

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