第23話 宇宙昆虫・ナナマンホシテントウ

 星に生きる全生命体を巻き込んだ大乱戦は、文字通り間寺星を揺るがした。


 間寺星人は勿論として、間寺ゴリラ、間寺ハマチ、間寺ナナマンホシテントウなど、宇宙類人猿から、宇宙魚類、宇宙昆虫に至るまで、とにかく生きとし生ける者が軒並み参加し、大いに盛り上がった場合に発生かいさいすると言われてきた伝説のフェス震だ。


 余談になるが、間寺ナナマンホシテントウはそんじょそこらのナナホシテントウとはワケが違う、本当に数万の星模様を身に付けている体長数十メートルの宇宙昆虫である。但し、七万という名を冠しているものの、その模様数が正確に数えられたことはなく、背中は勿論うなじや脇の下、口元にもびっしりとついている星を数えようと頑張った宇宙昆虫学者たちは大抵途中で食べられてしまうのがオチで、最期まで数え切ったものは皆無なのだ。

 

 そんなナナマンホシテントウも星をびっかびかに光らせてフィーバーする。

 それが三万年ぶり第四回目、間寺フェス。


 もはやディスコと化した戦場で、ダース・マサムーネと怪盗・紋付き袴マスクの決闘を見つめるユミーコは恍惚に震え、触覚がぐるんぐるん回っていた。自分の関係無いところで勝手に全生命体が争うというのはこの上ない快感で。しかもその発端は自分と来たもんだ。悪役令嬢冥利に尽きるとは正にこのことである。


「喰らえマサムーネ!宇宙忍法、火遁ミサイルを!」

 紋付き袴マスクが使った忍術が唸りを上げ、マサムーネの宇宙甲冑にべちんべちん弾かれる。なんという硬さ。そしてツヤのなさ。漆黒の黄泉具足はとても強力で、並大抵の攻撃では歯が立たなかった。


「なんの!宇宙ダーク剣術で相手だ!」

 更に宇宙ダーク妖怪の知識と力を借りたマサムーネは、空中でミサイルを叩き切るというかなり無茶な剣技を披露した。これが可能ならもう大抵のことは出来てしまうだろう。


 際限なく強くなっていくダース・マサムーネの力は歴代のダース武将たちをそろそろ超えようとしていた。


 誰かが止めなければならないが、それが出来るはずのユミーコにそんなつもりがさらさらないので、皆が困った。いい加減にどうにかしないといけない。

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