第7話 宇宙忍者バスター・マサーシ

 宇宙忍者は戦国異宇宙に広く忍んでいる宇宙生物の一種で、主に宇宙米を主食として隠れ里に隠れ住んでおり、その生涯の殆どを忍んで暮らしている。


 だが、彼等は気に入った屋敷を見つけると勝手に忍び込む習性があり、床下や天井裏に潜んだり、壁を勝手に回転式にするなどの被害を与えるため、人々からは厄介者として嫌われていた。


 なのでこの戦国異宇宙では、宇宙忍者の駆除を目的とする宇宙忍者バスターと呼ばれる業者がめきめきと業績を伸ばし、銀河のあちこちで日々、一進一退の攻防を繰り広げていた。


 宇宙忍者は巻物が好物だ。巻物を見ると本能的に密書だと勘違いし、懐に隠してシュタタタ!と誰かれ構わず無差別に届けたくなってたまらなくなるのだ。その習性を利用して、様々な色や形や味の疑似巻物餌を仕掛けた巻物罠で捕える方法が、現在の宇宙忍者対策の主流である。


 歴戦の宇宙忍者バスターであるマサーシが、宇宙忍者に囲まれて右往左往しているユミーコとマサムーネの元に颯爽と現れたのは、宇宙忍者の群れを宇宙忍者レーダーで捕捉したからだ。


「何奴!」突然のマサーシの登場に驚き、興奮状態の宇宙忍者たち。

 マサーシは華麗な動きで、宇宙忍者たちの頭巾を次々と剥ぎ取っていく。


「いやあー!恥ずかしい!」何よりも素顔を晒されることを嫌う宇宙忍者たちは真っ赤にした顔を両手で覆いながら散り散りに逃げ出していった。


「まあ、素敵……!」その鮮やかな戦いぶりにユミーコはまたときめいてしまう。ついさっきマサムーネに恋をしておきながら、こんなすぐに他の殿方に想いを寄せてしまうなんて……いけないことなのに……。


 しかし、やはりユミーコも悪役令嬢星人。その麺つゆ色の血が騒ぎ、囁いていた。 


 どっちかに決めないといけないという決まりはない。


 ――どっちとも、私のものにすればいいじゃない。

 ユミーコの心に火が灯った。

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