第5話 ユミーコ、おちる
大気圏に突入して真っ赤になったスシファイターと、それにしがみつくユミーコが、山や谷をまるでピンボールの様に弾き飛び、近年稀に見るスコアを叩き出してからようやく墜落した。
「うう……」
ちりちりになったユミーコの縦ロール触覚から煙がもくもくと噴き出している。スシファイターの脇に倒れていた彼女がふらふらと立ち上がろうとすると。
「貴様、何者だ!?」鋭い声と共に胸倉を掴まれ、身体をスシファイターに押し付けられた。その相手はかなりの男前な宇宙人。その容貌はまるで宇宙武士……ユミーコが後輩の女生徒から借りパクした、異世界戦国時代ものの漫画の主人公のような感じだった。七色の宇宙具足を着込んでいるので間違いない。
ユミーコはここでようやく、自分がよくある戦国異異宇宙に転生したと気付き、そしてそれ以上に、目の前にいる宇宙武士の男前さに驚いた。イケメンではなく男前。野性味あふれる眉毛は互い違いの色違い。
社長令嬢のユミーコはこれまで一度もこんな乱暴な扱いを受けたことがなかった。それがまさかこんな、寿司型の宇宙船にドンされるなんて……寿司ドンという、全宇宙の女子と寿司職人が絶対にときめく事をされちゃうなんて。ユミーコのおよそ二百五十の心臓が唸りをあげ、全身からヴーン……という低い響きを放った。
「!この音は……まさか君が伝説の悪役令嬢……!?」
はっとした宇宙武士もまた、触覚がぷるぷると震えた。
二人は、衛星軌道上というかなりの高度から堕ち、それよりもずっとずっと素敵な、恋へ落ちたのである。
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