第10話:部屋の中広いよな―

「55平米で最上階角部屋、鉄筋で防音、駅チカ5分で、賃貸じゃなく買い取りで5円ときたもんだ」

 ※あの後、不動産業者と楽しく交渉の上で、契約内容を変えてもらった


「そ、そうねぇ……窓からの景色もきれいだし(脅迫まがいで手に入れた建物から見る景色って、こんなに薄汚れた世界なのね)」

「(魔王のキャスト交代したほうが良いかもしれないです)」


「さてと、引越し準備しないとな。魔王、お前の家財を旧魔王城から持ってきたらどうだ?」

「あ、はい。そうですね。幸いにも家具付きの物件ですので、いくつかの不足分の家具を持ってきて、あとは消耗品とかを異世界ドラッグストアで仕入れれば事足りそうです」


 異世界にはドラッグストアがある。

 スーパーもある。

 散髪屋やクリニックもある。


 そういう設定だぞ。わかったな?


「いいなー、私もこんな広い家に住みたいな―」

「都心に住む日本人的には55平米はたしかに広いが、異世界ファンタジー的には、もっと木組みの2階建ての大豪邸とか住みたいものじゃないのか?」

「まあ、住んだところで1人だから広くても寂しいのよね……」

「あっ(察し)」


 今どきの女子の悩みって感じだなぁ…っていうか、女神ってそういう立ち位置なのか…というか、なんで都心に住む一般的な女性モニターみたいな感じで平然と返事しているんだ。


「じゃあ僕は家財等々を持ち運んできますので外出します」

「おう、言っておいで。暗くなる前に帰ってくるんだぞ」

「はーい」

「(なんでアンタがお母さんみたいな立ち位置になっているのだろうか)」


 魔王は魔力による魔法陣ワープとかそういうことはせずに、普通に扉を開けて外に出ていく。エフェクトアーティストさんには、なんかよくわからん魔法陣よりもバトルシーンでかっこいいもの作ってもらいたいから工数節約だ。

 常識だよね。


「ねえ、私達はどうするの。アンタだってこの世界で住む場所決めなきゃいけないじゃない」

「は? 何言ってんの? 俺たちもここに住むんだぞ」

「ふぁっ!!??」

「いやいや、魔王城に向かうシーンとか割愛したいだろ? ダルいんだよ。そういうの。野を超え山を超えとかのシーン体験するの嫌なの。それに、文字数だって無駄になるし」

「そのための駅チカ5分物件じゃなかったの?」


「俺は基本、外に出ないで物事を解決したいマンだ!」

「イキリ散らかす場所じゃないんだけどなぁ」


「ちなみに俺たちっていうことは、私もここに住むの?」

「当たり前だろ。だから3人でもギリ耐えられる55平米にしたんだよ」

「ということは……アンタと実質同せ……」

「……っていう、ラッキースケベシーンは当たり前だが割愛するので、今後とも淡々とよろしくお願いする」

「おk。というか、今までのシーンで私がアンタに惚れるようなきっかけなかったでしょ?」

「この作品に限った話でもないけどな」

「そうね」


 今軽くライトノベルディスったのは内緒。

 その後、魔王が家財を持って帰ってきた際に、俺たちも住むことを伝えた。


 魔王は2秒位、渋柿を口に含めたような顔をしたが、ああそういう感じねはいはいみたいな感じで、割と飲み込み早くこの状況に納得した。

 流石240歳、懐が広いね。

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