第17話:文字数調整で旅行行こうぜ

「よおし、出発!」

「「おー!」」


 ガタンゴトン……

 ガタンゴトン……

 1時間半くらい


「ついたー!」

「ついたわねー」

「ラノベだと、移動シーンを雑に書いても怒られないから楽で良いですね」

「戦闘シーンがキンキンキンで許されるなら、電車だってガタンゴトンだけで許されるだろう?」


 だってどんなクソ小説だって、バズれば何だって許されるんだもんね!


「異世界にも南国ってあるのねー」

「そりゃあ南に行けば南国はあるだろう」

「安直ですが、異世界って割とワールドマップ描かない作者が多いので、全体像を掴みにくいケースもありますし」


 その点、この小説は凄いよな。

 最後までご都合主義的たっぷりだもんな。


「ところで一つ気になったのですが」

「ん? どうした魔王」

「一応、この世界って魔法がある設定ですし、俗に言うテレポート的な魔術で南国まで来た方が良かったのかなーって」

「ばっかやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!」


 バキッ!!!!!!!


「ぐえー! 痛いンゴ!!!!!!」

「お前は旅行というものを理解していないな」

「ど、どういうことでしょうか?」


「旅行というのは、移動も含めて旅行だ。目的地なんて全体で見れば6割程度といってもいい」

「そ、そんなに……」

「いいか、今日みたいに新幹線に乗って、窓からの景色の変化を楽しみながら、駅に売られているご当地弁当を食べ、ダメとわかりつつ更に追いのお菓子をみんなでつまんで笑い話をする! そんな他愛もない部分も、大事な旅行の一部なんだぞっ!!!!」

「た、たしかに……」

「(そういえば異世界って新幹線あったのね。グリーン席ふかふかだったわ。あと、車内販売のコーヒーが美味しいのよねー。女神かんげきー)」


「テレポート、なんていう無機質でコスパを極限まで切り詰めたロマンがあるようで実のところそんなにロマンは感じにくい御手法は、毎日の仕事に行くときに使うので十分だ」

「テレポートって、今の世の一種の憧れですよね―」


 早く科学者たちはさっさとテレポート開発してくれれば、東京一極集中が解消されるというのにね。

 魔術師でも良いぞ。

 和歌山県付近の穏やかな気候の山奥で住みたい。


 とりあえず満員電車さっさと滅べ。滅べぇっ!!!!!!!!!!! 


「……ガタンゴトンで済ませた僅か2行とはいえ、思い出の1ページに残るような楽しい体験をしたことに気づいていないなんて、僕はなんて愚かなんだ!」

「(いや、ガタンゴトンの6文字でそこまで解釈できるわけ無いわっ! どんな妄想力求められてるのよ!)」


「うぅぅ……僕はなんてひどいことをっ……!」

「(なんか魔王ここでボケサイドに回って裕介のボケに乗っかってくるし、ツッコミを担当するって、こんなにもエネルギーを使う仕事なのね。とりあえず、これ以上話が進んだところで茶番が終わりそうにないから、一旦ここで切ることにするわね)」


 悲報、作者が登場人物に支配されて作品執筆を止められる件。

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