第7話:呪文とかどうするよ

「この世界って、そもそも魔法って存在するのか?」

「そりゃあ異世界だし、無いほうが叩かれるから"ある"ってことにしてるわ」

「ファンタジー世界観の刷り込みってやつか」

「無い理由を記載するほうが色々と面倒ですからね」


 世の中の人間って、なんで魔法にロマンを感じるんだろうな。

 わからんこともないが、現実世界に魔法なんてものができたところで、法律で人を傷つけてはいけませんとか、乱用してはいけませんとかの制約がついて、せいぜい競技種目とかで使えるとかに落ち着きそうな気がする。


 世の中がクソーって言われる要因やぞ。

 はぁ〜つっかえ!


「ところで魔王は魔法とか使えるのか」

「ええまあ……それっぽいハイグレードな技は一通り使える設定です」

「ということは、それに対抗できるための強い魔法を使う設定で俺も対抗しなくてはいけないな」


「まあそうですね。ちっちゃい炎出すよりは、ド派手なものが最終バトルで期待されると思います」

「意外とアニメ化したとき、アニメーターってその辺張り切りがちなのよね。しょぼい演出よりは、派手にかっこいい感じってオーダー出したほうが、こだわってくれるエフェクターとかいたりするし」


 少なめのオーダーで本人のアイデアに触発させると作品自体がアニメ化の時点でバズる事がある。運が悪いと逆もしかりだが。


「じゃあ裕介さんはどうしますか? もし好きな属性とかあれば、それを極めました的な最上位グレードの魔法を覚えたことにすればいいと思いますが……」

「または、どの属性にも該当しない、演出専用の最強魔法ってことにしてしまう手法も取れるわよ」


 その辺は20年前によくゲームとかで流行ってたけど、今ってどういうのが好まれるんだろうなー。


「今は様々な魔法を適材適所で駆使して、機転の効く立ち回りかっこいい系でウケが良い傾向ね」

「オープンワールドゲームとかまさにそうですね。自由に戦えるからこそ、技の内容に制御をかけないようにしている感じです」

「うーん、なんかササッと物語を終えたい身としては、あまりマッチしないような気がするが」


 異世界チートウンタラカンタラ戦法で、すべての魔法においてマウンティングするってルートならありかもしれんが、作者が異世界チート系を毛嫌いしているから、もうちょい理にかなう内容にしたほうが喜ぶかもしれん。


「じゃあ、さっきのサイキョーブレードに魔法の力を込めてとどめを刺すっていう戦法はどうでしょうか?」

「おっ、それいいかもしれん。エフェクトが派手に光るからエフェクターの人が張り切って作ってくれるかもしれないし」

「……相変わらずメタい発言で場をしらけさせたがるわね」

「いいだろう。どうせこんなクソ小説読んでるやつなんてほとんどいないしな」

「自分で言ってて悲しくならない?」

「あえてだよ。PV数が少ないピエ〜ンとか言いつつ、あとでバズって人気になれば、それもそれでギャップで美味しい会話のネタってことになるし」

「……それもメタいというかなんというか」


 世の中の小説は、内容よりもプロモーションだよ。

 売れたら後で文章をこっそり変えてあげればいい。

 ウェブ小説の特権ってやつだな。


「で、そんなこんなでサイキョーブレードに魔法をつけて攻撃するという行為に名前をつけてあげればかっこいいという話で落ち着いたわけだが……」

「それこそシンプルな名前をつけなさいよ。小さな子どもたちが真似できるくらいのほうが、バズりまでの道筋は良くなるわよ」


「なるほど、それでは熟考してからの最高のアイデアで締めた方が」

「シャイニングフィナーレで決定ね」

「賛成です」

「おまっ……まだ考え始めてもいないっていうのに」

「どうせこのあと、144時間後とか一文かかれたところで大したアイデアなんで出ないのは目に見えているし、純粋にそのやりとりをもう一度行うこと自体が苦痛でしょうがない」

「一定数いるんですよね。クリエイティブな才能が皆無でひらめきという素養に全くもって恵まれない人が」

「変に拘ろうとして逆に空振りをかましているだけならまだしも、その良さを周りがなんで理解しないんだとか勝手にイキリ散らかして周りに迷惑をかける系が一定数存在していて、こいつの場合はまさにそれに該当するのよ」

「……」


「あの、裕介さん。無駄な3点リーダーが書き込まれていますよ。注意してくださいね」

「都合が悪くなるとダンマリってネットでイキリちらかす系に多いのよね。面白いわよねぇ」


「あの、すみません。シャイニングフィナーレがいいと思います。異議ありません。それで進めてください」

「わかったわ。では議論の結果、シャイニングフィナーレで最後を締めるということで、光属性の魔法で悪を打ち砕くという王道パターンで大衆のファン層の心を掴んでいく形式で進めていくわよ」

「僕も闇属性の魔法は使える設定のようなので、あえて光属性が苦手ということにしておきますね」


 悲報、小説の中ですらイキリ散らかせない模様。

 現実世界の如く議論に不要な人間扱いされて、心臓の右っちょら辺がキュンと締め上げられるようで辛い。


 みんなは議論が上手にできるような大人になろうね。

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