第6話:武器の名は

「「武器の名は」」(女神とハモリ)


「ねえ裕介、タイトルもろパクリは良くないわよ」

「何だ女神。そんな事を気にしているのか? 商標登録に該当していなければ問題ないんだぞ。似ていると勝手に解釈している奴らが悪いんだ。わかるか?」

「(こいつは元の世界に戻ったら、民事裁判繰り返すパターンの人間ね。根性の腐り方が粘っこい)」 


「そんなことよりタイトルの伏線回収についてだ」

「……さっきアンタが購入していた武器の名前について?」

「ああ。かっこいい名前にしたいんだ」

「男ってよくわからないわねー」

「いくらここまでの流れが手抜きクソ小説の連続とは言え、俺自身には溢れんばかりのロマンは詰まっているんだぜ!」

「(ここまでロマンというワードが似合わない男も初めてね)」


「なんかお前はいい案はあるか?」

「急なフリね……じゃあ、例えば……エターナルブレードとか」

「あーはいはい。ゲーム開発者が2秒位で考えそうな陳腐なネタだな」

「(それサラリと作者ディスってないかしら?)」


「カタカナはわかりやすいが、どうしてもチープな感じが拭いきれない」

「じゃあどんな案があるのよ。まずはアンタが言ってみなさい」

「そうだなぁ……数字とか記号とか入れたほうがかっこいいと思うんだ」

「その武器の名は?」


「Thi_Mark-02, an Dar…S_of-E.G.K」

「まるで新規会員登録するときに自動生成されるパスワードの羅列みたいね」

「おまっ……ヂ・マークゼロツー・ダー…スオブイージーケーをディスろうとしているのか」


「カタカナにすると一気にダサくなる命名ね。バカが迷走したときに深夜にふとした瞬間考えそうな、実は中身がない陳腐なアイデアと呼ぶにふさわしいわ」

「お、おぬしぃぃぃぃぃぃ……!!!!!!!」

「はいはい、無駄な文字数は3万文字到達の助長になるわよー」

「ぐぬぬ……」


「あ、あの……」

「なんだぁ……!!!!」

「ひっ……そ、その……魔王の僕が言うのもなんですが、武器名はできるだけ短くしたほうが、3万文字に到達するのを遅らせることが出来るのでは……と思いまして」

「ああ、たしかに。最終決戦の際に、何度か武器の名前を叫んだり語ったりするシーンが複数回ある場合、極力短い文章のほうが、結果的に文字数節約になるものね」


「今どきは、強い武器ほどシンプルな名前で存在感を誇示する傾向がありますから、今風かつかっこよさを追求するべきかと……」

「そうねぇ……和風なら"朧"とか、洋風なら、"レン"とかで攻める手法は?」

「いい感じです。その例に習ってアイデアを出しましょう」


「う〜んそうか。シンプルが良いのか。シンプル……シンプル……」


 26時間後――


「シンプル……シンプル……」

「……ねえ、こいつ実は純粋にセンス無いんじゃないの?」

「武器1つの名前をぱっと出せないというのも、確かに閃きに欠けるかもしれませんね」


「小説だから26時間経過しても、一文で事を済ませられるからいいけど」

「シンプルにアイデアが出なさすぎで、その一文だけでも正直ストレスマッハですね」


「……よしっ! 決まったぞ!」

「はいはい、ようやく決まったの?」

「完璧だ。一時期沼にハマりすぎて歪みすぎた命名になりかけたが、原点回帰を忘れずに考え続けた結果、スッキリとしたアイデアにまとまった」

「じゃ、議論とかもう良いから、一旦その名前にしましょう」

「あとで小説的に辻褄が合わなくなったら、覚醒とかさせて名前を変えてしまえばいいですしね」


 ということで、俺は偶然横に落ちていた和紙に筆でスラスラを文字を書いていき。


「武器の名は――」

「ごくり」

「ごくり」


 一瞬のカットインが入り。


「その名は――『𝓙⃝̤̮』」

「サイキョーブレードでいいかしら」

「はい、それでいいです。途中から入ってきた読者でもわかりやすいですし」


「おいふざきんな……!!11!! まだ𝓙⃝̤̮の説明をしていないというのに、なに勝手に締めようと――」

「そういう文字って校正中にミスだよーって指摘されがちなのよねー」

「えっ……?」

「読めないとファンを増やそうとするときに、意外と読めずに作品のバズりの支障になる場合もありますし」

「えっ……えっ……?」


「こんな低知能な作品を見てくれる心の優しい読者でもわかりやすいものにしておけば、とりあえず内容を深く理解していない人でもなんとなく解釈してくれるものよ」

「まあ倒される側の僕が賛同するのもあれですが……確かに」

「ちょ、まてよっ……!!! 考え直せっ! 今から俺が説m……」


「じゃ、文字数節約のためにカットしまーす!」

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