第5話:良い天気だし最強武器をポチるか
「というわけで、俺の目の前に武器屋があるわけだが」
「へいらっしゃーい! 良いの揃えているよ」
「ご都合主義ですね……というか、僕はどうして同伴しているのでしょうか。これから僕は、あなたが購入する武器で倒される運命にあるわけでして」
「俺は歩くのが嫌いだ。自宅の賃貸も駅徒歩5分の好立地を家族が選んで住んでいる。武器を手に入れてすぐに倒せればコスパ良いだろ?」
「(魔王城とは)」
「ねえちょっと」
「なんだよ女神。なんか用か?」
「"なんか用か?"じゃないわよ! 前の話で私の存在が完全に消されていて、読者からの認識度が失われているところに懸念を抱いているのよ」
「だって、会話の中に入ってくる必要性なかったし。それに、この話の冒頭で、武器屋のおっちゃんが追加で登場してるんだぞ。もうこの物語に4人の登場人物が出てきて、てんやわんやなんだぞ」
「いやいやいや。4人って少ないほうでしょ」
「違うぞ」
「ふぁっ!!??」
「小説っていうのはな、だいたい2人、または3人程度の登場人物ででしか文章内での表現は難しい」
「そ、そうなの……?」
「漫画と違って活字で物語を解釈するには、特に登場人物の場合、特徴的な会話のイントネーションがなければ登場人物を増やすべきではない」
「極端って?」
「ほら、なんか魔法少女の左斜め後ろらへんで浮んでいるそれっぽい従者みたいなのいるだろ? ああいうのって、た、大変だプクー!! みたいな人外じゃなきゃイタタタな語尾をつけて喋りがちじゃんか? そういうケースは特別に許可されやすいから、4人目になっても問題ない。だが、お前は"私"とか、"わよ"みたいな女の子口調以外での特徴的な文脈がなく、説明口調を要するシーンでお前を登場させると、俺なのか魔王なのかわかりにくくなる。だから、不要なシーンではお前のことをいないものとしている」
「このひどい言われよう」
3万文字というのは、初心者小説家にとってはクソ長い目標だが、書き慣れている人間からすれば3万文字なんて落とし込むことが難しい絶妙な長さだ。書いていくうちに、それなりにターボがかかってくる絶好のタイミングで終わらせろと言われてしまうと、それはそれでブレーキを効かせにくいからな。
「というわけで、女神さん……いたっけ? みたいな残念な子は一旦存在を消すとにしている」
「アンタ友達いなそう」
存在をいったん消してーの、武器屋とのやりとりへ。
「へいらっしゃい、何にしますか?」
「魔王を残虐的に細胞一つ一つが悲鳴を上げながら血を吹き出し長時間かけて苦しみながら花火の如くド派手に散りゆくエンターテイメントを加味した面白みのある軽量かつ取り扱いやすいかっこいい武器をくーださい」
「(なんか性格がそのまま現れる武器を無茶振りでオーダーしたなぁ。できれば痛くないやつにしてほしいんだけど)」
「ちょうど良いのがあるぞ。一振りで残虐的かつ面白みのある殺戮が出来る人間工学に基づいた令和最新式2021年進化版の武器が」
「いくら?」
「定価8799億円のところ、今ちょうどセール中で、49億円で売ってるところさ」
「よし買った。令和最新式2021年進化版で定価から思い切り値下げされているところに好感が持てる」
「(それって二重価格表示じゃあ……)」
「へい毎度。もしなんかあったらカスタマーセンターに連絡してくれよな。5営業日以内にメールで返信されるから」
「おk。じゃあもらっていくぜ」
「(もしや、僕生存可能ルートに入ったパターン?)」
※補足
amaz○nではよく令和最新版、進化版という表記の製品が並ぶことが多く、それらは大体中国系企業の商品だったりする。
これらの製品は正直言って不良品率が高い上に、カスタマーセンターも外国人が多く、まともにサポートしてくれない傾向にある。
価格も定価だけやたら高くし値引き額を低く見せてお得感を出すような見た目をしているが、実際原価率は低く、高い定価設定からの値引き額表記は、二重価格表記という、いたずらにお得感を見せることは禁止とする行為に該当する。
例)定価19999円→値引き後3999円 など
今回はその内容をパロっています。
分からない人向けに。
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