あと3万文字以内に魔王を倒さないと世界が滅ぶ物語

タチマチP

第1話:まずは状況確認しようか

 異世界転生した俺は、ある日突然「3万文字以内に魔王を倒さないと世界が滅ぶからなんかいい感じに退治して世界平和よろしく」っていうクソみたいな雑要望でクソクソ女神様より命を受けて魔王退治をすることになった。


 異世界転生した理由は……えっとあれだよ。

 トラックでいいか?

 なんかもうそのへんの設定とか正直どうでもいいんだよ。


 はい、トラックね。トラック。

 ドーンでドドーンで気づいたらここ。OK?


「えー。いいの? せっかく自己紹介する大事な場面だって言うのに、影薄い存在になっちゃうよ?」

「黙れクソ女神。なに勝手に連れてきやがってこのクソ女神が」

「あああああーーーー!!!!! クソって2回言った!!! この男女平等のコンプラが異様に緊迫感ある状況の世の中でクソって2回言った!!!!」

「ここは異世界だぞ。コンプラ云々をSNSでボヤくフェミ様はお留守だ。だから諸悪の根源であるお前をクソというのはコンプラ的にもセーフになる」


 そもそも、女神ってなんだよ。

 なんで適当な設定で死んだことにしているのに女神っていう変なおまけついてきてるんだよ。今の時代の流行りか?


「そこは三途の川を渡ろうとしていたアンタを救い出して第2の人生のチャンスをあげようとした私の親切心が理由に決まっているじゃない。魔王を倒せたら現世で生き返らせることも出来るし、この世界で生き続けてもいいし」

「今風に言うなら、生殺与奪の権を他人に握らせるなっていうところか。別に人間なんていつか死ぬものだし、老いるのも美しさなんだろ?」


 というか、なんでこいつ俺の思考読んでるんだよ。

 物語の初期設定全体的に雑すぎやしねえか。


「まあ魔王倒せなんて、ブラック企業の営業になって1番を目指すくらい面倒で難しいことだからね。本当に実力がある勇者様は実のところ魔王退治なんてしないのよ」

「あれか。中小のブラック気質な思考の持ち主のほうが従順に安月給で動いてくれるから都合が良いってやつ」

「そんな感じ。というわけで魔王を倒す事になったんだけどね」

「すげえ雑で初心者ラノベ作家みたいな説明をどうもありがとう」


 なんかやけくそに執筆されている感が否めないのは俺だけか。

 バイト初日に研修無しで現場駆り出されている感覚に近いような気がする。


「というか俺も説明口調で冒頭に言わされたが、3万文字以内に魔王を倒すってどういうことだよ」

「書いてのとおりよ。3万文字以内に魔王を倒さないと、この世界は魔王が世界を滅ぼしてしまうからなんとかしなきゃ状況」


「3万文字っていうのは?」

「今ここに書かれている文章の合計の文字数」

「メタくないかそれ?」

「ここまでの雑執筆を見て今更何を」


 まあ俺もお前も小説の中の登場人物ってことで。


「ちなみに、この文章は説明に該当するから3万文字の中には該当していないよな?」

「いやいやいや。ふふふふふ」

「なにわろてんねん。マジだったらもうこのクソみたいな無駄話で1200文字近く使っていることになるぞ」

「とはいえ、読者も状況を知らなきゃ物語を理解することはできないでしょう。必要経費ってやつね。私達がどういうキャラクター性かっていうのも把握してもらわなきゃいけないわけだし」

「じゃあ、今後は文字数を節約して速やかに魔王を倒しに行くぞ。無駄口をたたくなよ。絶対だからな!」

「おっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!」

「おいいいいいい!!!!!! 貴重な37文字を、てめえの無駄なリアクションで消費するなーー!!!!!」


 ぎゃー

 ぎゃー

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