第26話 なで終わると順番待ちができていた。
「ゴロゴロ……うむ、人間よ、良い撫でっぷりじゃ」
「あ、はい」
トラ会長を撫でていると、そんな事を言われた。
周囲には猫がおり、人はいない。一日ぶりの一人である。篠田さんとか天ヶ崎さんとか、別に嫌いっていう訳じゃないんだけど、人づきあいは疲れるのだ。決して篠田さんが委員会の仕事で居ないとか、天ヶ崎さんは友達とカラオケ行ってるとか、そういうことは関係ない。
そういう訳で俺は今、ミケに付き合って猫の周回に参加していた。
「会長、今日の欠席者は二丁目のナオさんとお寺のタマさんです」
白地に黒のハチワレをした猫がトラ会長に報告すると、会長はふごふごと語り始める。
「では、今日の話題はナオさんとタマさんは何をしているのかという話をしよう」
猫の集会に何度か参加するようになって分かった事だが、猫の集会で話していることは基本的に二つである。
欠席者が何をしているかと、次にいつ集まるか、この二つ以外は特に何も話していない。
よくよく考えると、おばちゃんたちの井戸端会議でも似たような物なので、全ての生き物は結局のところこういう話しかしないんだろうな、と適当な事を考えた。
「……」
トラ会長を撫でていると、ハチワレの猫がおれの膝辺りでくつろぎ始める。どうやら撫でろという事らしい。
背中をそっと撫でつつ、ツボを探していく、トラ会長は撫でられたのに満足したのか、降りて少し離れたところで伸びをしたので、俺はハチワレ猫を抱え上げる。
「ハチです。お見知りおきを」
「うん、よろしく」
なんか折り目正しい挨拶で、微笑ましくなってしまう。俺は少しずつ分かり始めたハチのツボを刺激するように撫でていく。
「にゃっ……流石です。このなでなでは、おふぅ……トラ会長がゴロゴロ……病みつきになるのも分かります」
「気に入って貰えてよかったよ」
しっかりとした口調の中で、気の抜けた反応が挟まるのが面白い。俺はハチが満足するまでなでてやることにした。
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