第28話 お金はいくらあっても良い物だ
学生には金が無いのだ。
五百円のために夕飯を質素なものにしたりだとか、そういう事で節約しようとするが、どうしても遊ぶ金を増やしたければお小遣いと節制では限界がある。
……まあ、遊ぶ友達もいないわけだが、それはそれとして遊ぶ金は必要なのだ。相手が居ないのにTRPGのルールブック買ったり、ラノベ買ったり漫画買ったりと、居ないなら居ないなりにお金の使い道があるのだ。
「あー! お兄さん久しぶりじゃなーい?」
「うっそー! また来てくれたのぉ?」
「今日は私から逆指名しちゃおうかなぁー」
「や、みんな、今日は残念だけどお客さんじゃないんだ」
なんとも甘ったるい声で猫たちが迎えてくれるのを躱しつつ、店長と思しきおじさんに向かう。
「いらっしゃい。お好きな席へどうぞ」
「えっと、あの、で、電話……」
「うん?」
猫カフェで募集の張り紙があった時はチャンスだと思った。中々時給が低かったが、コンビニバイトなんて言う手際を求められる仕事も、引っ越し手伝いとかの体力仕事も無理な俺には、丁度いい仕事だった。
「ああ、バイト希望の子か」
何度もつっかえつつ用件を伝えると、店長は納得して大きく頷いて、テーブルの引き出しから書類を取り出す。
「履歴書は持ってきた?」
「あ、はい」
なるべく丁寧に、綺麗に書いた履歴書を渡して、軽い面接が始まる。
志望動機とか、猫アレルギーの有無とか、いつ入れるかとか、何とか受け答えしていくと、店長の中で答えが出たようで、咳払いと共に話が区切られた。
「うん、変に希望持たせても悪いしね、不採用!」
「えっ……」
完全に想定外の答えを貰って、俺の頭が停止する。
「い、いや、でも――」
志望動機はしっかり書いたし、学校が無い時は基本的にシフトに入れるとも言った。何が悪いのだろう。
「ちょっとね、受け答えをもうちょっとハキハキしてくれないと、こっちは接客業なんだからさ」
「あ、はい……」
言い訳のしようがない理由を突き付けられた。まあ確かに、これは仕方ない。
「お客さんとして来てくれるなら歓迎するよ。じゃあ、面接終わり!」
悲しいが、これはもう反論しようが無い。俺はそう考えて猫カフェを後にした。
頭を打ったショックで猫の言葉が分かるようになった件について 奥州寛 @itsuki1003
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。頭を打ったショックで猫の言葉が分かるようになった件についての最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます