第20話 幸い風邪はすぐ治った
結局、あの後は「風邪気味だから」という事で機会を改めてもらう事にした。
勿論対応したのは俺ではない。篠田さんである。
「お前……メスに庇ってもらって恥ずかしくないのかよ」
「恥ずかしいで言えば、もう既にこんな性格なのが恥ずかしいけど」
「……悪かった。とりあえず家帰ってゆっくり休め」
家に帰る途中、一緒になったクロスケから同情とも憐憫とも取れる言葉を掛けられながら、俺は歩いている。
今は身体を動かしているし、薬も効いているので、そこまで辛くはないが、家に帰ったらすぐに寝ることにしよう。
家には常備薬が残っているし、しっかり寝れば治るはずだ。
「で、その天ヶ崎って奴だが、こないだ俺を追っかけまわしてた奴で間違いないのか?」
「うん、今度会う事になるからよろしく」
俺もできれば天ヶ崎さんは苦手なタイプというか、合わないタイプだったので、あまり気は進まないのだが、篠田さんの友人という事であれば無視はできない。
「はぁー……あの黒髪に続いてかぁ……」
「まあまあ、撫で方は俺が教えるし」
「そうじゃなかったら問答無用で拒否ってるって」
クロスケの不機嫌な返答に苦笑しつつ、なんだかんだ自分を信頼してくれていることを感じて嬉しくなった。
「全くさー、人間ってのはすぐオレ達を撮ったり触ったり……」
「うん、ありがとう」
「……」
俺がそう言うと、クロスケは黙ってしまう。どうしたのかなと思って視線を向けると、彼は俺に飛びついてきた。
「おっとっと」
「へへっ、迷惑料だ。お前んちまで抱っこで連れて行きやがれ!」
「うん、いいよ」
元気そうなクロスケを、俺は鞄の中に案内してやる。彼は鞄の中でごそごそ姿勢を整えると、鞄から顔だけ出して大きくあくびをした。
「うーん、冷たい地面歩かなくていいから快適だぜ」
「それは良かった」
ご機嫌なクロスケで少し重くなった鞄を肩に掛け直して、俺は家にさっさと帰って寝ることにした。
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