第13話 ちなみに売店の猫は「ダンペイちゃん」というらしい。

 ライオンが岩の上で寝そべって、大きくあくびをしていた。


 俺は今、篠田さんと近所の動物園に来て、その帰り道だ。これはデートではなく、動物を見たいが、一人でいきたくない。という篠田さんに付いて行ってるだけだ。


「あのライオン、眠いしか言ってなかった……」

「確かに、見るからに眠そうだったな」


 篠田さんには、俺が猫の声を聞き取れることを伝えてある。


 まあ本当に聞こえていると思っていなそうだが、いきなり変な事を言っても気にしないでいてくれるのはありがたい。


「今日は助かった。家族で行ければよかったんだが……」

「気にしないで、俺もどこら辺までが猫と認識してるのか気になってたし」


 なんとか、俺も篠田さんとは普通に会話できるようになってきていた。


 あの後に分かった事だけど、篠田さんは男子生徒からよりも、女子生徒からの方が人望が厚かった。


 そりゃあ、あんな物怖じせずに物が言えて、しっかりと芯の通った性格をしていれば、好きになる人はいっぱいいるだろう。


「……あ、そうだ。ちょっとお土産見ていこうよ、妹にもキーホルダーくらいは買っておきたいんだ」

「わかった。ではそこの売店で何か買おう」


 動物園の敷地外にある売店に入ると、暖かい暖房で空気が一気に柔らかくなったような気がする。


「……ん?」


 気が付くと、白地に黒いブチ模様の猫が、足に引っ付いていた。


「おめぇさん、分かるぜ……相当の手練れだろ? 良いぜ、俺を撫でても」


 滅茶苦茶いい声だった。

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