第23話 篠田さん経由で意思疎通を図る

 コンビニの外に出ると、興奮気味のクロスケがすぐ近くにいた。


「おい人間! お前コンビニで猫缶かっただろ! もしかして――」

「いやいや、ミケ用のだから、餌あげちゃダメなの分かってるでしょ」


 鞄の中にある猫缶を取られないように、ぎゅっと取っ手を握る。


「はー? お前なー! 俺がこの煙草臭い中持ってやったんだ――ふにゃ……」


 毛を逆立てて怒るクロスケを撫でてやり、留飲を下げさせる。確かにコンビニ前には灰皿が置いてあって、俺でも意識すれば煙草の匂いを感じ取れた。


「期待させて悪かったよ、ほら、なでなでー」

「こらっ、俺はそんなゴロゴロ……手つきでやられてもっ、にゃあん……」


 クロスケはお腹を見せて気持ちよさそうにしている。ここまでくればもう抵抗は出来ない。口ではそう言ってるが身体は正直だ。という奴だ。


「ちっ、今日は勘弁してやるぜ」


 喉をゴロゴロ鳴らしながらクロスケは起き上がる。俺はクロスケを抱き上げて二人に向き直る。


「……陰キャ君すげー」

「だから言っただろう。師匠はすごいんだ」

「べ、別に、普通だよ」


 褒められたのがなんとなく気恥ずかしくて、俺は視線を逸らす。


 そう、猫の言葉が分かるようになれば、誰でもできる普通の事なのだ。いや確かに普通の人は猫の言葉わかんないけど。


「じゃ、じゃあさ、あーしもさわっていい?」

「い、いいけど……あいたっ!?」


 思わず許可してしまったが、当人であるクロスケから猫パンチで抗議があった。


「せめてこの煙草くっさいとこから移動してくれ、鼻が曲がる」

「分かった分かった、いつもの公園に行こう」


 クロスケを改めて宥めてから、俺は篠田さんに向き直る。


「ちょっと煙草の煙が嫌みたいだから、いつもの公園に行こうか」

「ああ、そうだな」


 そういうわけで、俺達は場所を移す事にする。

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